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コロナ下の救急往診サービス、発熱・感冒は減少し中等度・重症患者の割合増加-筑波大

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2021年06月16日 PM12:00

新型コロナのパンデミックで、救急往診サービスの利用はどのように変化したのか?

筑波大学は6月15日、新型コロナウイルス感染症のパンデミック前とパンデミック期間とに分け、東京でファストドクター株式会社の時間外救急往診サービスを利用した全ての患者(それぞれ6,462人と1万3人)を対象に、その特徴や重症度の変化を分析した結果を発表した。この研究は、同大医学医療系ヘルスサービスリサーチ分野/ヘルスサービス開発研究センターの田宮菜奈子教授と井口竜太准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「BMC Emergency Medicine」に掲載されている。


画像はリリースより

日本では、2020年1月の初確認後、現在でも新型コロナウイルスの感染が継続している。パンデミックの発生当初、個人防護具を含む機材が不足していたことなどから、クリニックや病院の多くは適切な感染対策ができず、発熱や感冒症状のある患者の診察が困難だった。これにより、救急外来に多くの負担がかかっていた。

新型コロナウイルスパンデミックの10年前には、救急外来の混雑が世界的に問題となっていた。これまでの研究で、救急車の利用や救急外来の受診をした患者について、必ずしも緊急の病院受診が必要ではなかったことが報告されている。救急外来の混雑を解消するため、最近では多くの国で、医師を直接自宅に派遣する夜間・休日の時間外救急往診サービスの運用が始まっている。

日本でもファストドクター株式会社が2016年から、電話によるトリアージで病院受診が必要な患者を判定し、初診でも医師が自宅を往診する夜間・休日の時間外救急往診サービスを提供している。新型コロナウイルスのパンデミックで、時間外救急往診サービスを利用する患者の特徴や重症度の傾向が変化したとことが予想されるが、今まで世界的にその報告はなかった。そこで研究グループは今回、発熱や感冒症状で時間外救急往診サービスを利用する患者の割合と重症度がどのように変化したのかを検証した。

・感冒症状のある患者が受診や救急往診サービスの利用控え、厚生労働省の通達が影響か

研究では、新型コロナウイルスパンデミック前の期間(2018年12月1日〜2019年4月30日)とパンデミック期間(2019年12月1日〜2020年4月30日)にファストドクター株式会社を利用した患者の匿名データを利用。この期間、東京都下で時間外救急往診サービスを利用した全ての患者を同研究の対象とし、その中でも発熱患者と感冒症状の患者を主な分析対象者とした。分析対象としたパンデミック期間中、時間外救急往診サービスは、患者から電話があるとオペレーターが新型コロナウイルス感染の可能性をまず判定し、可能性が高い場合には保健所に連絡していた。新型コロナウイルスの可能性が低い場合は、次に緊急度を赤、橙、黄、緑、白に分類する。その中で、1時間または6時間以内に病院受診が必要な橙と黄色に判定された患者に、救急往診サービスを提供していた。発熱および感冒症状のある患者について、性別、年齢、併存疾患(高血圧、糖尿病、高脂血症、痛風、慢性肺疾患、心不全、肝疾患、脳梗塞、がん、膠原病、認知症)、診断名、重症度を抽出。重症度は、救急往診後に医師が、それぞれの患者を市販薬で対応可能な「軽症」、病院受診が必要な「中等症」、救急車が必要な「重症」に分類した。

パンデミック前の期間では、時間外救急往診サービスを利用した6,462人中5,335人(82.6%)、パンデミック中では同1万3人中7,423人(74.2%)が発熱または感冒症状の患者だった。発熱または感冒症状の患者を年齢別に分けると、パンデミック前は16歳未満、16~64歳、65歳以上がそれぞれ59.0%、39.6%、1.4%、パンデミック中は55.9%、41.6%、2.5%と、多くの患者は65歳未満だった。重症度別で見ると、軽症、中等症、重症の患者の割合はパンデミック前が71.1%、28.7%、0.2%だったの対し、パンデミック中は42.3%、56.7%、0.9%と、中等度と重症の患者の割合が増えていた。特に、患者の年齢層別に見たところ、65歳以上で重症化している割合が多いことがわかったという。

研究グループは、発熱や感冒症状の患者は二次感染の懸念から病院受診をせず、時間外救急往診サービスを利用するケースが増えるのではないかと考え、パンデミック発生後は発熱や感冒症状の割合が増えたと予想していた。しかし調査結果では、発熱や感冒症状のある患者の割合は減少していた。

パンデミック発生当初、厚生労働省は、「37.5℃以上の風邪や発熱が4日以上続く」「強い倦怠感や呼吸困難がある」患者は、まずは保健所に相談することを推奨していた。そのため、発熱や感冒症状がある患者は、病院や診療所、そして時間外往診サービスの利用を控えていた可能性がある。実際、政府の政策が病院や時間外往診サービス受診を抑制させ、患者の重症化を増加させたかについては、今後さらなる研究が必要だとしている。

時間外往診サービスが二次感染のリスク低減に貢献していた可能性

重症化している患者の割合が増加したことに関しては、最近複数の研究で、新型コロナウイルスパンデミック期間中に二次感染を懸念して病院受診を控えたことにより、受診が遅れて重症化したケースが報告されている。しかし、時間外往診サービスであれば、患者の自宅に往診することから、二次感染の懸念を減らすことができる。パンデミック発生後、クリニックや病院が発熱や感冒症状のある患者の診療が困難であった中、東京都下において時間外救急往診サービスが7,000件以上の患者を診察したことは、保健所、、そして地域や病院での負担減少ならびに、二次感染のリスク低減に貢献していた可能性がある。この情報は、将来新たなパンデミックが発生した際に、救急外来や保健所の負担を軽減し、特に高齢者の重症化を防ぐために、時間外救急往診サービスを含めた医療政策の立案や社会行動を後押しするものと考えられる。

研究グループは今後、新型コロナウイルスパンデミック下で救急往診サービスを利用した患者を対象に、病院受診に関するアンケートを行う予定だという。これにより、実際に受診控えをしたのか、また受診控えしたのであれば、受診控えに関連する要因を特定するとしている。

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