日本薬剤師会の山本信夫会長は9日の定例会見で、新型コロナウイルス感染症ワクチンの打ち手として薬剤師が見送られたことに言及。「われわれ薬剤師がワクチン接種することは否定はされていない。今回は見送りとなったが、今後検討する俎上には載っている」とし、打ち手が不足した場合に備え研修などの準備を進めていく考えを示した。
ワクチン接種の打ち手については、5月31日に開催された厚生労働省検討会で医師や看護師、歯科医師に続き、臨床検査技師と救急救命士も接種の担い手に加えることが決まった。薬剤師は専門性を生かしてワクチン調製や予診のサポート、接種後の経過観察などを担う一方、打ち手としては見送りとなった。
山本氏は、「薬剤師がワクチンを接種することは、現行法では合法ではないことを考えないといけない」と述べた。ワクチン接種が認められた歯科医師や臨床検査技師、救急救命士は日常業務で注射行為を行っているのに対し、「(検討会の議論では)現段階で薬剤師は違法性を阻却してワクチン接種の担い手になるまでには至っていないと理解している」と説明した。
筋肉内注射に必要な知識や技能を身につけるため、シミュレーターを用いたワクチン接種の実技訓練を実施する大学薬学部があることについては、「薬剤師が合法的に注射を行うためには、教育を変えなくてはいけない」と述べた。
一方で、「ワクチン接種に決して消極的ではない。要請があれば接種できるよう体制準備を進められるようにする。日本で集団免疫が獲得できる体制を作るためにあらゆることをやっていく覚悟を持っていることは理解していただきたい」と語った。
安部好弘副会長は「変異株によって若年者が重症化し、その際に打ち手が不足している状況になったときには、薬剤師がいち早く期待に応えられるような準備を進めていく」と述べ、早急に薬剤師向けの研修マニュアルを策定する考えを示した。