製薬会社の小野薬品工業は5月26日、変形性関節症(OA)の治療で重視していることや治療満足度につながる要素などについて、医師と患者それぞれを対象に行った調査の結果を発表した。患者を対象とした調査の結果によると、痛みを長く抑えることができたら「趣味を行う」と回答した患者は4割で最多。痛みを長く抑えることができた場合、「したいことを前向きに取り組むきっかけになる」と答えた人は9割を占めた。
調査は、①OA治療状況や治療において重視していること、コミュニケーションの状況、②日常生活動作(ADL)/生活の質(QOL)の獲得、治療のきっかけや満足度につながる要素――を明らかにすることを目的とし、2020年12月にwebで実施した。医師調査の対象は、OA患者1名以上に薬物治療を実施している全国の整形外科医328人。患者調査では、最近1年間に医療機関で変形性関節症の治療を行った全国の45歳以上の男女423人を対象とした。
健康寿命の延伸や高齢者の社会参画に向け、「OA克服は喫緊の課題」
医師調査の結果によると、OAの部位別患者数は膝関節が7割を占め、次いで股関節が13%と多く、肩関節は5%、肘関節、足関節がそれぞれ3%、手関節・指関節が9%だった。治療に対する満足度は、鎮痛効果の強度に満足していると回答したのが約65%、即効性が57%、持続性が58%、通院頻度の少なさは37%だった。
一方、患者調査の結果では、治療満足度については鎮痛効果の強度で50%、即効性と持続性は43%が満足と回答していた。通院頻度の少なさの満足度は54%と、医師調査での満足度を上回ったものの、薬物治療全体に対する満足度は52%にとどまっていた。
痛みを長く抑えることができたらしたい行動を問うと、「趣味を行う」と回答した人が4割で最も多かった。次いで、「買い物に行く」が26%、「仕事をする」が16%、「家事をする」が15%だった。また、痛みを長く抑えることができた場合、「したいことを前向きに取り組むきっかけになる」と答えた人は9割を占めた。
内尾祐司氏(小野薬品工業提供)
同日のセミナーで講演した島根大学医学部の内尾祐司氏(整形外科学講座教授)は、痛みから動かないでいると、筋力・体力の低下やうつ状態を招き、痛みが悪化してますます動けなくなるという悪循環を繰り返し、最終的には廃用症候群につながる懸念があることを指摘。「健康寿命を延ばすために、痛みを抑えることがとても大事だ」と強調した。また、「活力ある高齢者の社会参画が必要とされている観点からも、OAの克服は喫緊の課題の1つ」との考えを示した。
小野薬品工業は5月19日より、関節機能改善薬「ジョイクル関節注30mg」(一般名:ジクロフェナクエタルヒアルロン酸ナトリウム)を発売している。月1回の投与で有効性が認められることから内尾氏は、即効性、持続性、通院回数を減らすことによる患者負担の軽減の観点から評価。患者のQOL向上に期待を示した。
なお、同薬を巡っては、承認を取得した3月23日から5月28日までの間(推定使用患者数約5500人)にショック・アナフィラキシーが10例発現し、因果関係は不明としつつ死亡例が1例報告されていることから、厚生労働省は6月1日付で安全性速報(ブルーレター)を発出し、添付文書の改訂を指示。医療関係者等への注意喚起を求めている。具体的には、▼緊急時に十分な対応のできる準備をした上で投与すること、▼投与後少なくとも 30 分間は、医師の管理下で患者の状態を十分に観察すること。投与直後に限らず、医療機関から帰宅後に発現している症例も報告されている点に留意すること、▼患者又は家族等に対して、ショック、アナフィラキシーが発現する可能性があること、およびその徴候や症状について十分に説明し、異常が認められた場合には、速やかに医療機関を受診するよう指導すること――としている。添付文書は同日、「警告」欄を新設するなど改訂された。