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子宮腺筋症が関連する不妊症のメカニズムを解明-京都府医大

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2021年06月08日 AM10:45

子宮内膜のマクロファージ発現と子宮内膜上皮の微絨毛内の微小管の分布を検証

京都府立医科大学は6月4日、子宮腺筋症が及ぼす不妊発症メカニズムの一端を解明したと発表した。この研究は、同大附属病院臨床研究推進センターのカーン・カレク准教授、同大の北脇城名誉教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Human Reproduction」に掲載されている。


画像はリリースより

子宮腺筋症は、子宮筋層内に子宮内膜腺管様組織が存在する疾患で、慢性骨盤痛、月経困難症、過多月経、貧血などの症状を有する疾患だ。子宮腺筋症は性成熟期後半に好発するため、以前は不妊症との関連は指摘されておらず、むしろ経産婦に多いと考えられてきた。しかしながら近年、晩婚・晩産化に伴い、子宮腺筋症を合併する挙児希望女性への対応の機会が増加している。

子宮腺筋症の臨床像は幅広く、重症の子宮腺筋症は難治性の不妊症となる。子宮腺筋症はその発症病因が明らかでなく、不妊症との関連も不明瞭だった。これまでの研究では、子宮から卵管内の精子輸送異常や組織内炎症の存在、炎症が誘導する卵管粘膜繊毛の損傷などがその要因として考えられてきた。一方、子宮腺筋症はその発症部位によりサブタイプに分類され、サブタイプにより異なった病因論が提唱されており、それに基づいた治療法が模索されている。

今回の研究では、子宮腺筋症が及ぼす不妊症発症機序を明らかにするため、(局在型、びまん型)における子宮内膜における組織マクロファージの発現と子宮内膜上皮の微絨毛内の微小管の分布について検証した。

子宮内膜局所のマクロファージ浸潤を確認

はじめに研究グループは、手術時に得られた子宮腺筋症(局在型、びまん型)、子宮内膜および対照(子宮頸部上皮内腫瘍)検体におけるCD68マクロファージの発現について免疫組織化学法を用いて検討した。さらに子宮腺筋症患者(局在型、びまん型)の患側(症状がある側)および健側(症状がない側)子宮内膜における微絨毛数および微絨毛内の微小管の分布について透過型電子顕微鏡を用いて評価した。

子宮内膜におけるCD68マクロファージは、局在型の患側および局在型の前壁/後壁で有意に発現していることを確認した(P=0.02、0.03)。子宮腺筋症(局在型)患者のうち、症状を有する群(有症状群)と有さない群(無症状群)におけるサブグループ解析では、有症状群の患側子宮内膜においてマクロファージが無症状群よりも多く浸潤している傾向を示した(P=0.07)。また、有症状群における局在型の患側子宮内膜におけるマクロファージは健側と比べて有意に高発現していた(P=0.03)。対照群の子宮内膜におけるマクロファージの発現は、子宮腺筋症(局在型)の子宮内膜より低いことを示した。

子宮腺筋症で微小管の異常、妊孕性低下に関与する可能性

一方、電子顕微鏡を用いて子宮内膜上皮の微絨毛数を観察したところ、局在型の患側では健側に比べて有意にその数は減少していた。また子宮腺筋症症例では微小管の異常を多く認めた。局在型での患側では特に異常な微小管を多く認めた。びまん型でも対照群と比べて有意に微小管の異常を認めた。これらの結果から、子宮腺筋症女性の子宮内膜における微絨毛内の微小管の異常分布がその妊孕性の低下に関与している可能性が考えられるという。

「子宮腺筋症女性の子宮内膜上皮における微細な構造変化が妊娠成立に必要な精子の遡上や胚の着床に影響すると考えられる。晩婚化・晩産化により増え続ける子宮腺筋症を合併する挙児希望女性にとって、重要な知見であり、子宮内膜上皮をフォーカスとする新たな生殖医療の展開が期待される」と、研究グループは述べている。

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