渡部一宏氏(昭和薬科大学教授)は「今回の結果は残念だったが、将来を見据えて、薬剤師向けの注射実技の研修会を開催すべき」と強調。全国の薬系大学と地域薬剤師会が協力して取り組むよう促した。
並行して、薬学教育にも筋肉注射などの実習を取り入れるよう提案した。実際に昭和薬大では、2016年度から4年生を対象に注射手技の講義や実習を実施し、シミュレーターでの静注や筋注を薬学生に体験してもらっているという。
前神戸大学病院薬剤部長の平井みどり氏(兵庫県赤十字血液センター所長)は、現在の薬学教育モデル・コアカリキュラムに「皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射・点滴等の基本的な手技を説明できる」との一文が盛り込まれているのは、「将来的に薬剤師が注射や採血をすることがあり得るという前提だ」と解説。
今後のコアカリ改定に向けた議論の中でも、「薬剤師は予防や健康増進にもっと関与すべきという意見が出ている」とし、薬学教育で今後ワクチン接種の教育が拡充される可能性があることを示した。
薬剤師資格を持つ弁護士の赤羽根秀宜氏(中外合同法律事務所)は、厚労省検討会でワクチンの打ち手として臨床検査技師と救急救命士が容認され、薬剤師が選ばれなかったのは、日常業務で注射針を扱う経験に差があったと説明。
「エビデンスがないと法改正はできないというのが基本的な考え方」と述べ、薬学教育や研修で実績を積み重ねていけば法改正につなげやすくなるとの見解を示した。
このほか、渡部氏からは「まずは学校薬剤師が先行して研修を受け、学校の集団接種から接種に関わるようになればそれが実績になる」、平井氏からは「薬系大学を集団接種会場として提供し、そこで薬剤師が主体的に全体を運用することで実績を積み上げてはどうか」などのアイデアも出た。
薬剤師をワクチンの打ち手として認めるよう署名活動を行い、河野太郎ワクチン担当相に提出するなど、ムーブメントを生み出した医師の八重樫牧人氏(亀田総合病院総合内科部長)は「これで終わったわけではない」と語った。
新たに2職種が打ち手として認められることになるが、それでもマンパワーは不足するとし、「31万人の薬剤師も必要。今後変わるかどうかは一人ひとりの動きにかかっている」と強調。170人以上の参加者に、自ら行動を起こすよう呼びかけた。