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新型コロナ抗体量、がん患者は健常人より低く薬物療法が影響の可能性-国がんほか

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2021年06月04日 AM11:15

がん患者500名と健常人1,190名の新型コロナ抗体保有率と抗体量を調査

国立がん研究センターは6月2日、がん患者における新型コロナウイルスの罹患状況とリスクを評価するため、2020年8月から10月にかけて500名のがん患者と1,190名の健常人について新型コロナウイルスの抗体保有率と抗体量を調査した結果を発表した。この研究は、同センターとシスメックス株式会社が、国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部(JH)の支援を受け、共同で行ったもの。研究成果は、「JAMA Oncology」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

がん患者は、高齢の場合に合併症を有する割合が高いことや、薬物療法や放射線治療、手術療法などのがん治療によって免疫力が一時的に低下することから、新型コロナウイルスに罹患するリスクの上昇や、罹患した場合の重篤化が懸念されている。

新型コロナウイルスの検査には、ウイルスの有無を調べ診断に用いるPCR検査や、感染により産生された抗体(タンパク質)を調べることで感染歴を把握することが出来る抗体検査などがある。抗体検査は、PCR検査により検出されなかった無症候性感染なども把握することが出来るため、疫学的調査に有用とされている。

がん患者と健常人における新型コロナウイルスの抗体保有率や抗体量を比較した大規模研究は世界的にも少なく、がん患者は健常人と比較し抗体保有率が高いのか、がん治療と抗体量に関連があるのかは十分にわかっていない。そこで研究グループは、がん患者における新型コロナウイルスの罹患状況とリスクを評価するために共同で研究を実施した。

国がんとシスメックスが共同開発した抗体検出試薬を用い評価

国立がん研究センター中央病院に通院中のがん患者500名と、健常人として国立がん研究センター職員1,190名の協力のもと、2020年8月~10月の期間に、新型コロナウイルスの抗体保有率と抗体量の測定が行われた。

がん患者につき、がん種の内訳は、固形がん489名(97.8%)、血液がん11名(2.2%)で、肺がん84名、原発性脳腫瘍75名、乳がん66名、膵臓がん50名、食道がん33名、頭頚部がん29名、大腸がん27名、肉腫22名、悪性黒色腫20名、血液がん11名、その他83名だった。がん治療の内訳は、研究参加1か月以内に何らかのがん治療を受けていた患者が355名(71%)で、放射線治療24名(4.8%)、外科手術35名(7%)、44名(8.8%)、分子標的治療薬92名(18.4%)、細胞障害性抗がん剤204名(40.8%)だった。健常人の職種は、医師179名(15.0%)、看護師385名(32.3%)、研究者197名(16.6%)、技師113名(9.5%)、薬剤師50名(4.2%)、事務職員266名(23.4%)だった。

研究に使用された抗体検出試薬は、国立がん研究センターとシスメックスが共同開発したもので、(N抗原)、(S抗原)に特異的に反応する2種類の抗体(IgG、IgM)を個別に検出することが可能。従来の抗体測定法では抗体の有無を測定し定性的な判断となる手法が多かったものの、この測定法では抗体量を定量測定することが可能だ。

抗体保有率はがん患者と健常人で差なし、抗体量はがん患者で低い

がん患者と健常人の背景を比較すると、がん患者では高齢、男性、喫煙者、合併症(糖尿病や高血圧など)を有する割合が多いことがわかった。

研究参加以前に新型コロナウイルス感染症に罹患していた6名(がん患者3名、健常人3名)を除外し抗体保有率を検討したところ、がん患者は0.4%、健常人は0.42%で抗体保有率はいずれも低く、差がないことがわかった。

一方、抗体量を比較したところ、がん患者は健常人と比較し抗体量が低いことが明らかになった。これは年齢、性別、合併症の有無、喫煙歴といった因子で調整しても有意な差を認めた。

細胞障害性抗がん剤や免疫チェックポイント阻害薬が抗体量に影響の可能性

次に、がん患者において抗体量に影響を与える因子を検討した結果、研究参加1か月以内に細胞障害性抗がん剤を受けている患者では抗体量(N-IgG)が低く、免疫チェックポイント阻害薬を受けている患者では抗体量(N-IgG、S-IgG)が高いことが判明。さらに、免疫チェックポイント阻害薬を投与された患者においては、年齢、性別、合併症の有無、喫煙歴で調整しても、投与されていない患者に比べ有意に抗体量(N-IgG、S-IgG)が高いことが明らかになった。一方、放射線治療や外科治療の有無による抗体量に差は認められなかった。

研究グループは今後、がん患者に対するワクチン接種の有効性を評価するため、ワクチン接種後の抗体量の推移を検討するとともに、がん治療が新型コロナウイルス抗体の産生に与える影響を明らかにしたいと考えているとしている。

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