人種/民族別のBMIカットオフ値の提案
肥満に伴う2型糖尿病発症ハイリスク状態を判定するBMIの最適なカットオフ値を、人種/民族別に検討した結果が報告された。英オックスフォード大学のRishi Caleyachetty氏らの研究によるもので、欧州肥満学会(ECO 2021、5月10~13日、オンライン開催)に合わせ、「The Lancet Diabetes&Endocrinology」に5月11日、論文が掲載された。
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2型糖尿病をはじめとする肥満関連疾患の予防のための肥満判定基準値として現在、主として白人集団を対象とする疫学研究のデータに基づいて定められた「BMI30以上」という基準が国際的に用いられている。ただし、この判定基準が白人以外の人種/民族にも適用できるかについて、これまで十分に検討されていない。Caleyachetty氏らは、英国の医療データベースを用い、白人以外の人種/民族について、2型糖尿病発症リスクがBMI30の白人と同等となるカットオフ値を検討した。
解析対象は、18歳以上であり、1990年9月1日~2018年12月1日に英国内プライマリケア医への受療行動が記録されていて、その受療行動以前に2型糖尿病診断の記録がなく、かつ1年以上にわたり経過を追跡可能なBMI15.0~50.0という条件の該当者。この条件を満たすのは147万2,819人で、白人が133万3,816人(90.6%)、南アジア人7万5,956人(5.2%)、黒人4万9,349人(3.4%)、中国人1万934人(0.7%)、アラブ人2,764人(0.2%)だった。
追跡期間中央値6.5年(四分位範囲3.2~11.2)で、6.6%に当たる9万7,823人が2型糖尿病と診断されていた。年齢と性別で調整後の検討から、BMI30の白人の2型糖尿病発症率と同等となるカットオフ値は、南アジア人では23.9(95%信頼区間23.6~24.0)、黒人は28.1(同28.0~28.4)、中国人は26.9(同26.7~27.2)、アラブ人は26.6(同26.5~27.0)であることが明らかになった。
Caleyachetty氏は、「われわれは肥満の判定基準が国際的に統一されていることに伴う懸念にスポットを当てた。結論として現在のBMI基準値は、白人以外の人種や少数民族の肥満に伴うリスクを十分に拾い上げていないという制限付きで成立していると言える」と述べている。そして、「肥満に伴う2型糖尿病発症予防の行動を人々に促すためには、人種/民族ごとに最適なBMIカットオフ値を設ける必要がある」と提言している。
なお、日本国内では日本肥満学会が、日本人での肥満判定基準をBMI25以上としており、この基準が定着している。
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