検討会では、医師や看護師、歯科医師に続き、臨床検査技師と救急救命士についてもワクチン接種の担い手に加えることが了承された。これら職種は、日常業務で人体への注射や静脈からの採血を担っていることを踏まえ、「ワクチン接種の実施について専門性を生かして貢献してもらうことが可能」と判断した。
ワクチン接種は医師法で医行為に該当するため、医師や看護師を確保できない場合や、現行法での違法性が阻却されることなどを条件に接種を認める方向だ。
一方、薬剤師や診療放射線技師、臨床工学技士については、予診のサポートや接種後の経過観察など、現行法上実施可能な業務で専門性を生かして貢献してもらうことが接種全体の効率化につながると判断した。
厚労省は、これらの職種を打ち手に含めなかったことについて「打ち手に関する議論ではなく、集団接種をスムーズに進めていくために各業務の担い手を考える議論」との認識を示し、「各職種が元来持っている専門性を踏まえ、どういう役割分担がいいのか議論した」と説明した。
薬剤師については「ワクチンの調製・シリンジへの充填作業」「予診のサポートとして、問診や予診票の確認」「ワクチン接種後の経過観察」が当面、期待される役割と位置づけた。
自治体の約2割では、医師や看護師などワクチンの打ち手が充足していないとの結果も報告されている。河野太郎ワクチン担当相は5月、ワクチンの打ち手に薬剤師を検討対象に入れる考えを表明していた。
ただ、厚労省は、安全で迅速なワクチン接種体制を構築していくためには、ワクチン接種の担い手を確保することよりも、予診のサポートやワクチン調製などの業務を担う人材を確保することが先決との認識だ。患者に対する投薬後のフォローアップや服薬指導など薬剤師の専門性を考慮すると、接種以外の業務を担うのが望ましいとの考え方を示した。
安部好弘委員(日本薬剤師会副会長)は、「接種遅延のボトルネック解消に向け、接種会場で薬剤師がより積極的に活躍できるよう後押しできるような方向性を示していただきたい」と要望した。
その上で薬剤師によるワクチン接種については、「違法性の阻却に加え、国民の理解や関係職種の業務分担が必須になる。今後の接種の進捗状況を見つつ、必要に応じて、薬剤師の注射行為についても違法性が阻却され得るかの検討が行われると理解している。日薬でも薬剤師が必要になった場合に備えて研修の準備を行っている」と述べた。