マイコプラズマの滑走運動時の動きは捉えられていなかった
大阪市立大学は5月25日、最小の細菌である「マイコプラズマ・モービレ」が滑走するための分子モーターの動きを検出することに、世界で初めて成功したと発表した。この研究は、同大大学院理学研究科の宮田真人教授らの研究グループと、金沢大学ナノ生命科学研究所の古寺哲幸教授と安藤敏夫特任教授の研究グループとの共同研究によるもの。研究成果は、「mBio」に掲載されている。
画像はリリースより
マイコプラズマは、菌体の片側に小さな突起「接着器官」を形成し、この突起で宿主組織の表面にはり付き、はり付いたまま「滑走運動」を行う。滑走運動時には、ATP合成酵素から進化した特殊な分子モーターが細胞内部で力を発生していることが示唆されていたが、その動きが捉えられたことはなかった。
マイコプラズマ分子モーターの構造をリアルタイムに記録、動きの詳細も判明
研究グループは、マイコプラズマを生きたままガラスに固定し、高速AFMの細い針で細胞の表面を軽く叩きながら探ることにより、分子モーターの構造をリアルタイムにビデオに記録した。
さらに、得られたビデオ画像に隠された信号を計算によって抽出することで、分子モーター粒子がATPを加水分解して力を発生する際の動きをナノレベルで追跡することに成功。その結果、鎖状に連なったモーター粒子が、細胞進行方向に向かって右側に約9ナノメートル、細胞内側に2ナノメートル、300ミリ秒以内の時間に動くことを明らかにした。
ナノスケールのデバイスや医薬品開発の基盤となることに期待
このことは、他に類を見ない構造であるマイコプラズマの分子モーターが、どのようなメカニズムで滑走運動を行っているか、さらに、そのメカニズムがATP合成酵素のどのような性質から進化してきたかを説き明かす、大きな手掛かりになると思われる。
今後は、ガラスに固定した細胞から膜を除去したり、単離した分子モーターを使ったりすることにより、空間的、時間的により高い分解能における解析を目指すとしている。また、それとは別に単離した分子モーター構造を電子顕微鏡で解析することで、原子レベルの解像度で明らかにし、これらの情報を統合することで、滑走運動メカニズムを原子レベルで理解したいとしている。
「滑走の構造とメカニズムを詳細に明らかにすることで、運動能の起源と動作原理に迫ることができ、ナノスケールのデバイスや医薬品を開発するための基盤になることが期待される」と、研究グループは述べている。
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