HBp17、口腔扁平上皮がん悪性化に伴い高発現、増殖や血管新生に関与
広島大学は5月31日、扁平上皮がん細胞におけるHeparin-binding protein 17(HBp17)タンパク質の新たな機能を明らかにしたと発表した。この研究は、同大病院の新谷智章講師、檜垣美雷歯科診療医、東亜大学医療学部の岡本哲治教授(広島大学名誉教授)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Cancers」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
扁平上皮がんは、口腔がんの大部分を占める。HBp17は、扁平上皮がん細胞株A431細胞の培養上清より精製された分泌タンパク質。扁平上皮細胞で特異的に発現され、線維芽細胞増殖因子-1、-2(FGF-1、-2)と可逆的に結合し、細胞外へのFGFsの分泌や、細胞表面でのFGFsの安定性・遊離・活性化に深く関与していることや、HBp17が口腔扁平上皮がんの悪性化に伴い高発現し、その増殖や血管新生に密接に関与していることが、研究グループ等の先行研究により報告されている。また、活性型ビタミンD3が口腔扁平上皮がんにおけるHBp17の発現を抑制することで増殖を抑制することも明らかにしてきた。
HBp17が扁平上皮がん細胞分化抑制で、細胞増殖、運動能、造腫瘍性を促進
今回の研究では、扁平上皮がん細胞におけるHBp17の新たな機能を明らかにするため、ゲノム編集技術(CRISPR/Cas9)を用いて、HBp17をノックアウト(KO)した扁平上皮がん細胞を作製。HBp17KO扁平上皮がん細胞は、KOしていない対照細胞と比較して細胞増殖能、細胞運動能が有意に低下していた。また、HBp17KO扁平上皮がん細胞を移植した免疫不全マウスの背部皮下に移植した腫瘍の造腫瘍性や増殖能も有意に低下していたという。
KO細胞と対照細胞間での遺伝子発現の差異(マイクロアレイ)解析およびタンパク質発現の差異(プロテオーム)解析を行った結果、HBp17KO扁平上皮がん細胞では対照細胞と比較して上皮細胞の細胞分化や終末分化に関わる分子の発現が著しく上昇していた。
今回、HBp17が扁平上皮がん細胞の分化を抑制することで、細胞増殖、運動能や造腫瘍性を促進していることが明らかになった。今回の結果から、今後HBp17を標的にした扁平上皮がんの治療への応用の可能性が期待される、と研究グループは述べている。
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・広島大学 研究成果