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ビニールシート等による空間遮蔽がマイクロ飛沫感染の一因となる可能性-電通大ほか

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2021年06月01日 AM11:30

室内の二酸化炭素濃度の計測/可視化は感染予防対策で重要

電気通信大学は5月28日、新型コロナウイルス感染症の対策として広く実施されているアクリルパネルやビニールシートによる空間遮蔽は、空気を滞留させるため換気に悪影響を及ぼし、結果としてマイクロ飛沫感染の一因となる可能性があることを発見したと発表した。この研究は、同大i-パワードエネルギー・システム研究センターセンター長の横川慎二教授、同大情報学専攻の石垣陽特任准教授、同博士前期課程1年の川内雄登氏、産業医科大学産業生態科学研究所の盛武敬准教授、産業医科大学産業医実務研修センターの喜多村紘子准教授、宮城県結核予防会の齋藤彰氏の研究グループによるもの。研究者にいち早く共有し広く意見を求めるため、速報原稿がプレプリント・サーバー「medRxiv」に投稿されている。


画像はリリースより

新型コロナウイルスの感染拡大予防のためは、「接触」「飛沫」「マイクロ飛沫」という3つの感染経路ごとに、複数の対策を講じることが重要だ。昨今、室内の二酸化炭素(CO2)の濃度を計測・可視化することにより室内の換気状態を良好な状態に保ち、たとえ空気中に「マイクロ飛沫」が存在したとしても、これらをいち早く排出させる手法が注目されている。

同大はこれまで、調布駅前商店街との共同実証実験により、飲食店・学習塾・スポーツジムなどのCO2濃度を可視化し、環境ナッジ行動を支援してきた。また、同大附属図書館内に設置するアクティブラーニングスペース「Ambient Intelligence Agora」において、CO2センサーを含む194台の環境センサーが常時配置されており、そこで蓄積された約3.5年分のビッグデータは室内環境の分析・予測の研究に活用されている。令和3年度の入学式では、20台のCO2センサーを使った式場内のCO2濃度分布のリアルタイム可視化を行った。

さらに、地下のライブハウスのような特殊な空間における新しい換気方法を提言するための実証実験をアイドルグループ「仮面女子」と共に行ったほか、2021年4月からは調布市のワクチン接種会場における三密を回避するため、会場内でのCO2濃度のリアルタイム可視化も行っている。

クラスター発生の原因は、パーテーションによる気流遮蔽、換気能力低下の可能性

このように換気改善のための実証実験を行う中、宮城県内でマイクロ飛沫による空気感染が原因とみられる新型コロナウイルスのクラスターが発生したとの連絡を受け、同大を中心とする研究グループが現地調査と分析を行うことになった。

クラスターが発生したのは宮城県にある事務室で、飛沫感染対策の一環として、向かい合った机の列を隔てるように、床面からの高さ1.6mのビニールシートパーテーションが設置されていた。この遮蔽により空間が5つの区画に分断されており、区画によっては換気回数が毎時0.1回程度と非常に低くなっていたことが実験的に確かめられた。これらのうち2 区画で小規模なクラスターが発生していたことから、パーテーションによって気流が遮られた結果として換気能力が低下し、区画内でマイクロ飛沫による空気感染が発生した可能性が示唆されることがわかった。また、熱流体シミュレーションによる解析結果からも、区画間の空気の流れがビニールシートによって阻害されていたことも明らかになった。

「区画ごとに窓開け」「入口扉と廊下の先にある窓を開放」などで換気改善

改善策として、区画ごとに窓開けを行い、さらに入口扉と廊下の先にある窓を開放することで、まんべんなく空気の流れ道をつくりだすことができ、換気回数を毎時10~28回まで向上できることがわかった。

また、今回の取り組みを契機として同大は、クラスターが発生した宮城県内の事務室について管理者に適切な換気方法を指導すると共に、4個のCO2測定器を現地に導入した。測定器はスタッフ全員が見やすい位置に設置されており、同大からリアルタイムでモニタリングすると共に、既定の値を超えた場合は担当者に通知される仕組みだ。換気方法を改善して以降、現地ではCO2が1,000ppmを上回ることはなく、適切な換気が維持されているという。

CO2の測定/可視化が広まり、適切な行動変容につながることに期待

新型コロナウイルスの変異株や第4波への対策が求められる中、多人数が集まる場所ではマイクロ飛沫による空気感染リスクを低減するため、「換気の悪い密閉空間」を避けることが重要とされている。今回の結果は、飛沫感染対策のパーテーションの設置の際には、同時に区画ごとに換気を確保することが重要であることを示している。「今後も公共空間での安全安心を支えるため、CO2の測定・可視化が広まり、適切な行動変容(ナッジ)につながることが期待される」と、研究グループは述べている。

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