社会保障などの政策提言を行う新時代戦略研究所は28日、マクロ経済スライドを導入した新たな薬価制度改革案を発表した。経済成長に見合った薬剤費の総額上限を設けつつ、革新的医薬品の価値の適正な評価を両立させるもので、薬剤費が経済成長率を上回った場合は、長期収載品などの成熟製品群の薬価を引き下げて調整することを提案した。また、原価計算方式に代わる医薬品の価値を反映できる薬価算定方式の導入や市場拡大再算定の廃止も求めた。
改革案は、同研究所の新薬イノベーション研究会がまとめたもの。現行薬価制度に対して、将来的な医療保険財政との整合性が不明確であり、新薬創出等加算と市場拡大再算定という「アメ」と「ムチ」が併存するなど、イノベーションに財源を重点配分する枠組みになっていないなどと問題意識を示した。
今回の改革案は、薬価制度について財政政策と産業政策を結びつけるものと位置づけ、マクロ的アプローチとミクロ的アプローチの2本柱で構成している。
具体的に、マクロ的な視点では、薬剤費の増加を中長期的な経済成長の水準に見合う範囲にコントロールする「薬剤費マクロ経済スライド」(仮称)の導入を提案した。
薬剤費が指標とする経済成長率を超えた場合は、革新性の低い新薬群や長期収載品など成熟製品群の薬価を引き下げることで、薬剤費を調整するほか、市場実勢価に調整幅2%を上乗せする現行方式を発展的に見直し、薬剤費の成長上限と実勢価水準の乖離分をスライド調整率とする新方式の導入を求めた。
一方、ミクロ的な視点では、革新的医薬品の価値を薬価に反映させるため、原価計算方式に代わる新たな算定方式を提案。科学的、客観的に妥当な類似薬が存在しない場合、コストの積み上げではなく、臨床ベネフィットやQOL改善などの既存治療との価値比較に基づき薬価を算定すると共に、外国価格を参照して上限値を設定する方式の導入を求めた。
さらに、特例拡大再算定と市場拡大再算定の廃止を提案。革新的新薬と基礎的医薬品については、薬剤費マクロ経済スライドによる総薬剤費調整の対象から除外するとした。