■研究開発拠点整備を要求
提言では、コロナ禍でも国産ワクチンが未だに実用化されていないなど、緊急時に即応できない現状を踏まえ、国産ワクチンの開発促進に向けて政府が取り組むべき長期的な国家戦略を示した。
最先端の研究開発への取り組みが不十分だったことが今回の事態につながったとして、世界トップレベルの研究開発拠点の整備を要求。必要な非臨床試験を行える設備を持つほか、感染症対策と相互に転用可能なワクチン・医薬品の多様なモダリティを育成し、緊急時でも迅速にワクチン開発できる体制を求めた。
開発のための研究費を迅速に配分する機能も必要とし、日本医療研究開発機構(AMED)への「先進的研究開発戦略センター」(SCARDA)の創設を明記した。
平時は新規モダリティに関する研究開発状況や企業、ベンチャーの動向把握などを担う一方、緊急時には病原体に対応したシーズとモダリティを速やかにマッチングし、研究開発支援を行う。
薬事承認プロセスにも変化を求めた。第III相試験の実施が困難な実態を踏まえ、新興感染症の発生時に治療薬とワクチンに関する迅速な臨床試験ができるよう、緊急時における臨床試験の枠組みに関するプロトコルを予め作成しておく必要があるとした。
治験では、アカデミアやベンチャーのシーズを迅速に臨床試験に導出できるよう、臨床試験の計画策定や結果解析を担う人材の育成を通じて臨床研究中核病院等のワクチン臨床開発拠点における体制整備などを求めた。
ワクチンの製造拠点整備も必要とし、既存の製造設備に必要な改修を支援する。新設するバイオ医薬品の製造設備については、有事にワクチン製造に転用可能なデュアルユース設備を構築し、平時から技術、人材面での支援も行う。
製薬企業の予見性を高めるため、国によるワクチンの買い上げを記載したほか、産官学で国内外の感染症情報を収集し、ワクチンの確保や研究開発が必要な感染症を特定するなど、モニタリング機能の強化も求めた。
この日の協議会で、井上信治健康・医療戦略担当相は提言の取りまとめを受け、「政府全体の戦略とするため、健康・医療推進戦略本部に早々に諮り、閣議決定を目指す」と述べた。
国産の新型コロナウイルス感染症ワクチンについては、「安全性に最大限配慮し、なるべく早く治験を終えて活用できる状況に持っていきたい」とした。