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大人の「自分の歯」の多さ、うつ症状の少なさと関連-東京医歯大ほか

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2021年05月26日 PM12:00

水道水フロリデーションで歯が守られることと、うつ症状予防に関連はあるか

東京医科歯科大学は5月21日、米国の Behavioral Risk Factor Surveillance System (BRFSS) のデータ分析により、「自分の歯が多いと、うつ症状が少ない」という口腔と精神的健康の因果関係を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の松山祐輔助教の研究グループと、ラドバウド大学のStefan Listl教授、ヴッパータール大学、キングス・カレッジ・ロンドンとの共同研究によるもの。研究成果は、「Epidemiology and Psychiatric Sciences」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

口腔と精神的健康の相互の関連が報告されている。しかし、口腔の健康(原因)が精神的健康(結果)に影響するかどうかを調べるには、社会経済状況や健康関心度などさまざまな背景因子を考慮する必要があり、これまで因果関係は明らかになっていなかった。

米国では、)予防のために水道水フロリデーションが実施されているが、導入時期や人口カバー割合が地域で異なっている。水道水フロリデーションとは、水道水中のフッ化物イオン濃度を緑茶に含まれるのと同じくらいの濃度に調整する保健施策。海外では70年以上前から実施されており、効果と安全性は科学的に証明されている。

今回の研究では、この差を自然実験(公共政策や災害などの外的要因が、ある要因を変化させている状況)ととらえ、子どものころの地域の水道水フロリデーションで歯が守られることが、大人になってからのうつ症状を予防するか分析した。

歯を1本失うごとに、うつ症状得点が0.146点高くなる

米国のBRFSSのデータから、2006年、2008年、2010年調査のいずれかに参加した人のうち、1940~1978年に生まれた16万9,061人のデータを対象とした。永久歯が生える年齢に相当する5~14歳の10年間における地域(郡、county)の水道水フロリデーション人口カバー割合を合計し、水道水からのフッ化物曝露の指標とした。

分析の結果、5~14歳のときの水道水からのフッ化物曝露は、大人になってから自分の歯が多く残っていることに強く関連していることがわかった。歯を1本失うごとに、うつ症状得点(PHQ-8得点)が0.146点(95%信頼区間0.0008,0.284)高くなることが明らかになった。また、統計的に有意ではないものの、歯を1本失うごとに、中等度以上のうつ症状(PHQ-8得点10点以上)がある人の割合が0.81パーセント・ポイント(95%信頼区間-0.12,1.73)増えることが明らかになった。

口腔疾患は多くの人にみられる病気で、日本でも約4000万人に未治療のう蝕があると推計される。「口腔疾患はフッ化物応用の普及、砂糖摂取の減少、禁煙環境の整備などで予防可能である。本研究から、自分の歯を多く保つことはうつ症状の予防にもなる可能性が示された」と、研究グループは述べている。

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