両製品は20日の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会で「特例承認して差し支えない」とされた。田村憲久厚生労働相は同日夜、記者団に対して、「大規模接種会場で使用するモデルナ製はしっかりと供給し、それぞれの会場で接種を開始してもらうことになる」と述べた。全国民への接種に向けては「より幅広い接種体制が組みやすくなるので、自治体と相談しつつ、新たな接種体制を組みたい」と語った。
今回、特例承認されたのは、モデルナが開発し、武田が3月に承認申請した「COVID-19ワクチンモデルナ筋注」(一般名:コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン)と、アストラゼネカが2月に承認申請した「バキスゼブリア筋注」(一般名:コロナウイルスワクチン〈遺伝子組み換えサルアデノウイルスベクター〉)の2製品。
接種対象は18歳以上となっており、用法・用量はいずれも1回0.5mLを、アストラゼネカ製が4~12週、モデルナ製は4週の間隔を開けて2回筋肉内に注射する。保管温度は、アストラゼネカ製は2~8℃、モデルナ製はマイナス25~マイナス15℃で、保管期間は共に6カ月。1バイアルから10回接種分の採取が可能となる。
接種不適当者は、発熱や重篤な急性疾患を呈した人と重度の過敏症罹患者。アストラゼネカ製についてはワクチン接種後に血小板減少を伴う血栓を発現した人も不適当とした。
また、高齢者は問診等を慎重に行い、被接種者の健康状態を十分に観察すること、妊婦は予防接種による有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ接種することとした。
モデルナ製は、ファイザー製と同じmRNAワクチンであるのに対し、アストラゼネカ製は新型コロナウイルスのスパイク蛋白質のアミノ酸配列をコードする遺伝子を組み込んだサルアデノウイルスを、ヒト胎児腎由来細胞で増殖させ、精製後に安定剤を添加して調製した注射液。
同部会では、ファイザー製とモデルナ製の臨床試験における発症予防効果が90%超であるのに対し、アストラゼネカ製は約70%と有効率が劣るのではないかとの指摘が出た。さらに、安全性面では接種後に血栓症が起こるリスクを問題視し、承認に慎重な声も上がった。
ただ、臨床試験データから2回目接種以降には発症予防効果が期待でき、血栓症リスクについては「適正な診断と処置があれば十分に対応可能」と接種による有用性が危険性を上回ると判断し、承認を了承した。
現在、日本脳卒中学会と日本血栓止血学会と協力して診断、治療の手引きを作成中。医療機関や被接種者に対し、接種後1カ月間は血栓症の発現に注意し、初期症状として頭痛が出ることなどを情報提供する。症状が出た場合に早期に対応する体制も構築する。