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新型コロナ対応の保健所職員の約7割に不眠症状-東北大ほか

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2021年05月21日 AM11:15

保健所職員のメンタルヘルスの問題に焦点

東北大学は5月20日、)に関する対応にあたる宮城県の保健所職員・関係者にアンケート調査を実施し、メンタルヘルスの問題を抱える者の割合とともに、電話相談対応業務の中で感じた困難の内容を明らかにしたと発表した。この研究は、同大災害科学国際研究所の臼倉瞳助教、國井泰人准教授、同大学院医学系研究科の富田博秋教授、小坂健教授、東北大学病院の瀬戸萌氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「Asian Journal of Psychiatry」にLetters and Correspondenceとして掲載されている。

COVID-19感染拡大状況下において、地域保健を支える保健所職員は、地域住民や地域の医療機関からの電話相談への対応、陽性者の入院・療養の調整、陽性者の行動調査と接触者の把握、接触者の検査の調整や健康観察など、膨大かつ多様な業務を抱えており、過重な負担がかかっている。これまでの研究で、医師や看護師などの医療従事者がさまざまなメンタルヘルスの問題を抱えていることが明らかにされているが、保健所職員のメンタルヘルスの問題に焦点を当てた研究は行われていなかった。

半数近くに精神不調、COVID-19診察に従事する医療従事者に匹敵する高さ

今回研究グループは、COVID-19に関する電話相談対応を行っている、あるいは行った経験のある宮城県管轄の全保健所(9か所)の職員・関係者のうち、2020年9~11月に回答した23人を分析対象とした。メンタルヘルスの問題については、抑うつ症状、不安症状、心理的苦痛、心的外傷後ストレス反応、不眠症状、飲酒問題を取りあげ、各評価指標に定められている基準点に基づいて、一定以上に各問題を有している者(ハイリスク者)かどうかを判定した。

最もハイリスク者数が多かった指標は不眠症状で、約7割(69.6%)だった。次いで、心理的苦痛が半数以上(56.5%)、心的外傷後ストレス反応が半数近く(45.5%)でハイリスクの状態であることが明らかになった。抑うつ症状31.8%、不安症状17.4%、飲酒問題18.2%がハイリスク者だった。研究で示されたハイリスク者の割合は、最前線で治療に当たる医療従事者を対象とした研究で示されている数字に匹敵する高さだったという。

相談者からぶつけられる不安や怒りなどのネガティブな感情への対応に苦慮

また、電話相談対応に従事する中でつらかった点・困難に感じた点に関する自由記述回答について分析したところ、苦情等の相談者への対応に苦慮していることなどが含まれる「相談者への対応の難しさ」「PCR検査の要否や紹介先の判断の難しさ」、職場の労働安全衛生やサポート体制などが含まれる「有事対応に伴う過重な業務体制」の大きく3つに分類された。

限られた地域・人数に基づく調査結果ではあるが、これらの知見から、電話相談対応を行っている保健所職員が、医療従事者に匹敵するメンタルヘルスの問題を抱えている可能性が示される一方で、その困難の内容は、相談者からぶつけられる不安や怒りなどのネガティブな感情への対応といった、医療従事者とは異なる保健所職員特有のものであることが明らかとなった。

保健所職員に対する「相談者のマナー再考の必要性」が周知されることに期待

この調査が国内の感染拡大の第2波から第3波の過渡期に行われたことを踏まえると、より感染者数の多い地域・時期に実施されれば、さらにメンタルヘルスの状態は深刻であることが予想される。

「研究結果を受けて、職員に対するストレスケアマネジメントの実施、職員の増員、電話相談対応の指針の提示・対策整備などの重要性が認識されるとともに、広く一般の人々に対して、保健所職員の抱えるストレスの大きさと保健所職員に対する相談者のマナー再考の必要性が周知されることが期待される」と、研究グループは述べている。

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