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妊娠中の大豆・イソフラボン摂取、子の多動問題に予防的である可能性-愛媛大ほか

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2021年05月17日 AM11:00

議論が分かれる、胎児期イソフラボン曝露による子の発達への影響

愛媛大学は5月14日、妊娠中の大豆摂取が生まれた子の多動問題と仲間関係問題に予防的であり、妊娠中の納豆およびイソフラボン摂取が子の多動問題に予防的であることを示す研究成果を、世界で初めて発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科疫学・予防医学講座の三宅吉博教授、東京大学、琉球大学の研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Food Sciences and Nutrition」電子版に掲載されている。


画像はリリースより

研究グループは、母子におけるさまざまな生活習慣や生活環境と、母親のうつ症状や子どものアレルギー疾患や発達などの健康問題との関連を明らかにし、日本人の母子の健康問題の予防と健康増進に役立てるための研究を実施している。今回、平成19年度に九州・沖縄在住の妊婦1,757人が調査に参加し、母親と生まれた子どもを追跡している「九州・沖縄母子保健研究」のデータに基づいて、妊娠中の大豆、イソフラボン摂取と生まれた子どもの行動的問題との関連を調べた。

大豆に含まれるイソフラボンは、構造的に17β-エストラジオールと似ており、エストロゲン作用を有する。胎児期のイソフラボン曝露による子どもの発達への影響については、議論が分かれており、良い影響を与えているという説と、悪い影響を与えているという説が存在する。しかし、これまで妊娠中の大豆、イソフラボン摂取と生まれた子どもの行動的問題との関連を調べた疫学研究成果はなかった。

九州・沖縄母子保健研究の1,199組の母子を対象に

今回の研究対象は、九州・沖縄母子保健研究の5歳時における追跡調査に参加した1,199組の母子。妊娠中に食事歴法質問調査票を用いて、妊婦の栄養データを得た。、イソフラボンの摂取量が低い人から並べ、人数が均等になるよう4グループに分け(4分位)、統計解析を行った。

5歳時追跡調査では、保護者に世界中でよく使われており、25の質問で構成される、子どもの強さと困難さアンケート(Strengths and Difficulties Questionnaire:SDQ)を用いた。SDQでは情緒問題、行為問題、多動問題、仲間関係問題、向社会的行動という5つの下位尺度を評価する。親が各質問に「あてはまらない」「まああてはまる」「あてはまる」の3択で回答し、各々0、1、2点が割り振られる。各下位尺度は5つの質問の合計点0~10点で評価。各下位尺度は点数に応じて正常水準、境界水準、臨床水準の3つに分類できるが、そのカットオフ値は各国、地域でさまざまだ。今回の研究では、2008年の久留米大学の報告に基づいたカットオフ値を用いて、境界水準あるいは臨床水準にある場合、情緒問題、行為問題、多動問題、仲間関係問題及び低い向社会的行動が認められると定義した。

妊娠中の大豆、イソフラボン摂取が最も低いグループを基準とした場合の、他のグループにおける各下位尺度のリスクを比較。この際、非栄養要因である母親の年齢、妊娠週、居住地、子数、両親の教育歴、家計の年収、妊娠中の母親のうつ症状、妊娠中の母親のアルコール摂取、妊娠中の母親の喫煙、子の出生体重、性別、母乳摂取期間および生後1年間の受動喫煙を統計学的に調整した。さらに、栄養要因として、大豆摂取と多動問題との関連においては緑黄色野菜以外の野菜と総果物摂取を、イソフラボン摂取と多動問題との関連においてはビタミンC、ビタミンB6、カルシウムも統計学的に調整した。

妊娠中の総大豆摂取が多いほど、5歳児における多動問題・仲間関係問題リスク「低」

その結果、5歳児1,199人において情緒問題、行為問題、多動問題、仲間関係問題および低い向社会的行動は、各々、子の12.9%、19.4%、13.1%、8.6%、29.2%に認められた。妊娠中の総大豆摂取が多いほど、5歳児における多動問題および仲間関係問題のリスクが低下していたという。

大豆製品ごとの解析では、妊娠中の納豆摂取が多いほど、多動問題のリスクが低下。同様に、妊娠中のイソフラボン摂取が多いほど、多動問題のリスクが低下した。豆腐、大豆の煮物、みそ汁の摂取は情緒問題、行為問題、多動問題、仲間関係問題、低い向社会的行動とも関連がなかったとしている。

諸外国からの報告がなく、さらなる研究が必要

今回の研究では、妊娠中の総大豆、納豆、イソフラボン摂取が生まれた子の多動問題に予防的であり、また、妊娠中の総大豆摂取は生まれた子の仲間関係問題に予防的であることが示唆された。しかし、諸外国からの報告がなく、今回の結果を確認するためには今後のさらなる研究が必要だ。

また、日常で食品や栄養素は、単独で食べるのではなく、複数の食品・食材料を組み合わせて摂取されている。研究グループは今後、食事パターン(dietary pattern)という摂取する食品の傾向を総合的にとらえる方法に着目し、妊娠中の食事パターンと子の行動的問題の関連を調べる予定だとしている。(QLifePro編集部)

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