RSウイルス流行シーズンを初めて迎えた健康な乳児対象
英アストラゼネカ社と仏サノフィ社は4月26日、ニルセビマブの第3相MELODY試験で、呼吸器合胞体ウイルス(RSウイルス)感染症流行シーズンを初めて迎えた健康な後期早産児および正期産児(在胎35週以上)において、プラセボに対する主要評価項目のRSウイルスに起因する診療を要した下気道感染症(LRTI)発症頻度の統計学的有意な低下を達成したと発表した。同試験結果は、今後の医学学術集会で発表される。
ニルセビマブは両社により開発中で、アストラゼネカ社独自の半減期延長(YTE)技術を用いた長期作用型抗体。YTE技術により、一般的に5か月にわたるRSウイルス流行シーズンにおける同剤の必要投与回数は1回となる可能性がある。現行の抗RSウイルス抗体シナジス(一般名:パリビズマブ)は投与対象が高リスクの小児に限られているとともに、予防期間は1か月であるため、1度のRSウイルス流行シーズンに5回の投与が必要だ。
また、受動免疫療法であるニルセビマブは、個人の免疫系が活性化されワクチンを介して感染を予防または症状を軽減するする能動免疫療法とは異なり、乳幼児に抗体を直接投与することで、RSウイルス感染の予防を助ける。予防効果の発現に数週間要する能動免疫療法とは異なり、受動免疫療法は即時に予防効果を発現することが可能だという。なお、ニルセビマブは現時点で日本未承認。
RSウイルスは、細気管支炎および肺炎を含むLRTIの季節性流行の原因となる極めて一般的な伝染性ウイルス。世界中で乳幼児が入院する主な原因となっている。
承認申請は2022年予定
MELODY試験は、RSウイルスの流行シーズンを初めて迎えた健康な乳児を対象とし、投与後150日間プラセボとの比較で、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査により確認されたRSウイルスに起因する診療を要したLRTIの発現率の検証を目的とする、少なくとも21か国で実施された無作為化プラセボ対照第3相試験。
在胎35週以上の健康な後期早産児および正期産児が2:1の割合でニルセビマブの筋肉内注射による50mg単回投与群(体重5kg未満の乳児)もしくは100mg単回投与群(体重5kg超の乳児)またはプラセボ投与群に無作為に割り付けられた。2019年7月~2021年2月までの期間に約1,500例の乳児がニルセビマブまたはプラセボの投与をRSウイルスの流行シーズン当初に受けた。安全性評価を完了すべく、さらに1,500例の乳児が北および南半球で登録される。
今回、ニルセビマブの安全性プロファイルの中間解析はこれまでの試験データと一貫していた。ニルセビマブとプラセボ群の安全性に関して臨床的な懸念は見られなかったとしている。同試験は、さらなる安全性データを収集すべく、進行中だ。
また、ニルセビマブは、RSウイルスシーズンを初めて、あるいは再度迎える早産児および慢性肺疾患(CLD)や先天性心疾患(CHD)に罹患している乳児を対象とし、現行の抗RSウイルス薬であるシナジスとの比較で、ニルセビマブの安全性および忍容性を評価するMEDLEY第2/3試験においても評価中。
MEDLEY試験は、2021年第2四半期に最初のデータを先行して発表予定だ。MELODY試験、MEDLEY試験ならびに第2b相試験は、2022年予定の薬事承認申請の基本的な根拠データとなるとしている。
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・アストラゼネカ株式会社 プレスリリース