骨肉腫の進展機構解明と新規治療法開発を目指しマウスで研究
金沢大学は5月11日、細胞外小胞による骨肉腫の進展(浸潤・転移)機構の解明に成功したと発表した。この研究は、同大ナノ生命科学研究所の華山力成教授、吉田孟史特任助教、医薬保健研究域医学系の土屋弘行教授、同大大学院医薬保健学総合研究科医学博士課程医学専攻の荒木麗博大学院生らの研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Oncology」に掲載されている。
画像はリリースより
骨肉腫は小児・AYA世代(思春期・若年成人)に多い骨腫瘍で、現代においても転移例での5年生存率は10~20%と極めて予後不良な悪性腫瘍だ。そのため、その進展機構の早急な解明と新規治療法の開発が望まれている。
研究グループは今回、腫瘍が分泌する細胞外小胞が、miRNA146a-5pという分子を腫瘍周辺のマクロファージ(前破骨細胞)へと送達することで破骨細胞への分化を阻害し、腫瘍が浸潤・転移を起こしやすい環境を構築することを、骨肉腫モデルマウスの実験により見出した。
miRNA146a-5pが細胞外小胞によるTRAF6の生成抑制に関与、マクロファージの破骨細胞への分化を阻害
まず、腫瘍細胞を骨に移植した骨肉腫モデルマウスにおいて、腫瘍による細胞外小胞の産生を抑制した。その結果、血管新生や転移が抑えられることがわかった。次に、腫瘍由来細胞外小胞がマクロファージ(前破骨細胞)に作用し、TRAF6の生成抑制及びNFκB経路のリン酸化抑制を通じて、破骨細胞への分化を阻害することを見出した。
続いて、悪性度の異なる2種類のヒト骨肉腫細胞株におけるmiRNAの全網羅的解析を行った結果、高悪性度の細胞株に5倍以上多く含まれているmiRNA146a-5pが細胞外小胞によるTRAF6の生成抑制に関与し、マクロファージの破骨細胞への分化を阻害することを明らかにした。さらに、患者検体において治療前の生検組織で破骨細胞の分化が抑制されている症例では、有意に転移が多く予後不良であることがわかったという。
細胞外小胞の産生を抑えることで、腫瘍の浸潤・転移を阻止できる可能性
今回の研究により、骨肉腫の進展に細胞外小胞が深く関与しており、その産生を抑えることで、腫瘍の浸潤・転移を阻止できる可能性が示された。今後、骨肉腫の早期発見や予後診断、新たな治療法の開発へと研究が発展することが期待される、と研究グループは述べている。
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