世界の出願ファミリー件数を見ると、08~18年までに1万7195件が出願されている。12年までは米国籍出願人によるファミリー件数が最も多かったが、13年以降に中国籍出願人が件数を大きく伸ばし、5836件と全体の33.9%を占めた。米国籍が4943件の28.7%、欧州国籍が2789件の16.2%、日本国籍が1344件の7.8%だった。
08~18年における日米欧中韓への出願人別ファミリー件数ランキングでは、中国の首都医科大学が175件で首位となり、米アイオニス・ファーマシューティカルズ、米リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア、米アルナイラム・ファーマシューティカルズ、中国薬科大学と続き、中国勢が上位10位のうち4者を占めた。
08~12年は、上位5位までを日米欧の企業・大学で占めていたのに対して、13~18年では上位に入る中国籍出願人が増えた。日本国籍出願人は08~12年で見るとオンコセラピー・サイエンスが5位にランクインしていたが、08~18年は上位10位から姿を消した。
研究開発動向を見ると、11~19年の論文発表数は2923件。このうち、研究者の所属機関国籍・地域別で最も多いのは欧州国籍の803件で全体の27.5%を占めた。次いで、米国籍が654件の22.4%、中国籍が531件の18.2%、日本国籍が251件の8.6%となっている。
11~14年、15~19年に分けて見ると、日米欧韓国籍は論文発表数が1.3~1.7倍増えているのに対し、中国籍研究機関は3.1倍増加している。11年には日本と同程度だったが、18年に米国を上回り、欧州に比肩している。
それに対し、日本は国際特許出願件数では米国に次いで2位、日米欧中韓への出願ファミリー件数では中国、米国に次いで3位、日米欧中韓いずれの出願先国・地域においても出願件数が3位以内にあるなど、中分子医薬では一定の研究開発・技術開発力を持っていたことが確認された。
特にペプチド医薬や核酸医薬の分子設計、製造技術、製剤技術等の「要素技術」で、日本の特許出願数や論文発表件数が高かった。一方で、ペプチド医薬、核酸医薬では臨床試験に至っている企業数が欧米に比べて少ないことが判明した。
特許庁は、アカデミアの基礎技術を中分子医薬の創薬につなげるため、オープンイノベーションによる「中分子医薬エコシステム」の構築を提言している。