関東地方在住20~79歳の男女2,013人対象インターネット調査、2020年9月に実施
東京医科大学は4月26日、接触確認アプリ「COCOA」に関する考えについてのインターネット調査結果を発表した。この研究は、同大公衆衛生学分野町田征己講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Public Health in Practice」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
新型コロナウイルス感染症において、濃厚接触者の調査(以下、接触確認)は重要な対策の一つだ。接触確認は従来、電話や面談での口頭で行う方法が一般的だったが、新たな方法として、スマートフォンのBluetooth機能を活用した接触確認アプリが開発された。日本版接触確認アプリ「COCOA」は2021年4月時点で総ダウンロード数が約2700万件。多くの人が使用している一方で、より効果を高めるためにはさらなる普及が必要になっている。
今回の研究は、COCOAに関する市民の考えとその使用状況を明らかにすることを目的としたもの。関東地方在住の20~79歳の男女2,013人を対象に、接触確認アプリ「COCOA」に関する考えについてのインターネット調査を2020年9月8日に実施した。
「働いていない」「所得が低い」人でCOCOA使用が少ない傾向
調査の結果、回答者のうち75.5%がCOCOAについて「役に立つかわからない」と回答。また、回答者の約半数がプライバシーやセキュリティ、接触者とわかったときの煩わしさ、電池の消耗や通信費への懸念があると回答した。
COCOAを実際に使用していると答えた429人のうち、「初期設定を行う」「Bluetoothを常にオンにする」など、COCOAの効果を最大限に活用するために必要な使い方をしている人は60.8%だった。
続いて、多変量解析を用いて、COCOAの使用者がどのような対象に少ないかも解析。その結果、心理的要因としては、プライバシーへの懸念、COCOAの効果に対する懸念、電池の消耗や通信費への懸念がある人ではCOCOAを使用している人が少ないことが明らかとなった。
さらに、社会統計学的要因としては、働いていない人や所得が低い人でCOCOAを使用している人が少ないことが明らかになったという。
市民の懸念事項を考慮、使用方法の啓発も重要
接触確認アプリは、最大限に効果を発揮した場合に有効な感染症対策になることがシミュレーション研究で報告されている。また、ワクチンなどの特異的な治療・予防法と比較して迅速に開発が可能であることから、今後さらなる未知の感染症が流行した場合の初期の感染症対策として重要になる可能性がある。しかし、接触確認アプリの導入率は、プライバシーに関する懸念やアプリケーションに関する問題などから、世界的にも芳しくない状況だ。
今後の接触確認アプリの普及においては、今回の研究で明らかになった市民の懸念事項を考慮するとともに、その使用方法についても啓発を行うことが重要であると考えられる、と研究グループは述べている。
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・東京医科大学 プレスリリース