■疑義照会ルールも検討
電子処方箋は、オンライン資格確認等システムを基盤に紙の処方箋を電子化し、国内の医療機関と薬局が電子化された処方・調剤情報を一元的に管理し、活用する仕組み。処方箋を応需した薬局は、患者の求めに応じて医療機関が登録した電子処方箋を取得することが可能になる。
薬局薬剤師は、オンライン資格確認等システムから入手できる薬剤情報や健診情報も共有することで、重複投薬の防止や適切な薬学的管理を行うことが期待されている。調剤結果はクラウドサーバーに送信し、処方箋発行元の医療機関にフィードバックすることで、次の処方情報の作成に生かす。
今年度予算として計上した38億円のうち、大半をシステム改修に充てる。1月にオンライン資格確認等システムを運営する社会保険診療報酬支払基金と国民健康保険中央会を運営主体とすることに決定。システム改修を行うベンダー選定を行っている段階にある。障害が起きたとしても速やかに対応できるようインフラ基盤を整備し、運用テスト期間を十分に確保する計画だ。
電子処方箋の基盤となるオンライン資格確認等システムの本格運用開始時期は、10月まで延期することになった。厚労省は、電子処方箋の運用開始時期について、「来夏の運用開始のスケジュールに変更はない」と影響は限定的との見方を示す。
今後、薬局・医療機関が共有すべき処方・調剤情報の具体化が課題となる。電子処方箋では、処方した医薬品名や用法・用量など必須記載事項に加え、検査値など任意記載ができる備考欄を設ける方向で検討を進めている。調剤情報では、重複投薬等を確認するために必要な記載事項として、実際に調剤した医薬品名や調剤量を想定。
ただ、共有する情報量が増えるとシステム負荷がかかり、うまく情報を伝達できない不具合も想定されるため、共有すべき情報の範囲について検討する。
医師や薬剤師が行う記名押印の代替となる電子署名の仕組み検討も急ぐ。医師・薬剤師の資格を電子的に認証するための要求水準を満たし、電子署名も合わせて行えるのはHPKI(保険医療福祉分野公開鍵基盤)に限られているが、普及が進んでいないのが現状だ。
民間の電子署名サービスでも簡便な機能付加で資格確認が行えるかを調査し、HPKIを代替するサービスも検討する。
疑義照会への対応については、電話による疑義照会が最も有効な手段であり、全てをシステム化するのはハードルが高いとの認識だ。電話で照会すべきものと、緊急性が低くシステム上での事後的な報告でも対応可能なものを整理し、疑義照会が煩雑にならないようルール整備も進める。
電子処方箋の運用開始後の姿について、厚労省は、地域の実情に応じて医療機関と薬局が取り決めをして電子処方箋を活用してもらい、地域から電子処方箋を用いた地域包括ケアの先進事例を発信できるよう働きかけたい考え。
一方で、紙の処方箋を希望する患者も存在するため、来夏の運用開始以後も当面は紙の処方箋と電子処方箋の併存を認める方向である。