日本では2020年10月に承認申請
スイスのエフ・ホフマン・ラ・ロシュ社は4月15日、Evrysdi(TM)(一般名:リスジプラム)について、I型の脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)の乳児(登録時点で月齢1~7か月)を対象に評価した、グローバル第2/3相FIREFISH試験のパート2における2年間の新たな成績を発表した。今回の長期データは、FIREFISH試験のパート2における1年間の主要な結果に基づいており、第73回米国神経学会(AAN)年次総会で発表された。
リスジプラムは、中枢神経系および全身のSMN(survival motor neuron)タンパク質レベルを増加させるように創製された、経口投与が可能な臨床開発中の薬剤。運動神経および筋肉機能をよりよくサポートするために、SMN2遺伝子から機能性のSMNタンパクの産生が増加するように設計されている。2020年8月に米国で、2021年3月に欧州で承認を取得。日本では2019年3月に希少疾病用医薬品指定を受け、2020年10月に承認申請した。
FIREFISH試験は、I型SMAの乳児を対象とした2パートからなる非盲検のピボタル試験。パート1(21人)は乳児におけるリスジプラムの安全性プロファイルを評価し、パート2における用量の決定を主な目的とした、用量漸増試験。パート2(41人)は、リスジプラムを2年間投与した後、非盲検下継続投与期間に移行する、ピボタルな単群試験だ。パート2の登録は2018年11月に完了した。
パート2では、BSID-III(Bayley Scales of Infant and Toddler Development-Third Edition)の粗大運動スケールで評価した、投与開始12か月時点における、最低5秒間、支えなしで座位が保持可能な乳児の割合を指標として、有効性の評価を行った。
12か月時点、支えなしで座位を少なくとも5秒間および30秒間保持する能力改善
同試験の主要評価項目は、12カ月時点で支えなしで5秒以上座位を保持することができた乳児の割合。リスジプラムを投与した乳児は、12か月目には、支えなしで座位を少なくとも5秒間、および30秒間保持する能力が改善された。
24か月目のデータでは12か月目からの継続的な改善が示され、BSID-IIIの粗大運動スケールの評価では、支えなしで座位を少なくとも5秒間保持することができた乳児の割合は、12か月目の29%(12/41人)に対し、24か月目で61%(25/41人)だった。支えなしで座位を少なくとも30秒間保持することができた乳児の割合は、12か月目の17%(7/41人)に対し、24か月目では44%(18/41人)だった。
また、24か月時点では、92%(35/38人)の乳児が経口で栄養摂取が可能な状態を維持。探索的な解析から、嚥下能力も同様に維持していた(95%、36/38人)。I型SMAの自然歴では通常、生後12か月以上の乳児の食事には介助が必要だ。
治療開始24か月時点で93%生存、83%が人工呼吸器の永続的な使用なしに生存
治療開始24か月時点で、93%(38/41人)の乳児が生存。また83%(34/41名)の乳児が人工呼吸器の永続的な使用なしに生存し、本疾患の自然歴と比較して改善が認められた。
12~24か月目までの間に死亡は認められなかった。治療を行わなかった場合、死亡または人工呼吸器の永続的な使用が必要となる年齢(中央値)は13.5か月だ。またリスジプラムの投与2年目では、自然歴と比較して入院数が少なく、34%の乳児(14/41人)が治療の24か月間にわたり入院を必要としなかった。
HINE-2(Hammersmith Infant Neurological Examination Module 2)の評価では、リスジプラムの投与により12か月時点と比較して24か月時点において継続して改善していることが示唆された。頭部を直立させることができる(24か月時点:63%、12か月時点:44%)、仰向けからうつ伏せに転がることができる(44%、10%)、補助により立位を維持することができる(15%、5%)などが含まれる。
また、CHOP-INTEND(Children’s Hospital of Philadelphia Infant Test of Neuromuscular Disorders)スコアにも継続的な改善が認められ、12か月時点(56%、23/41人)と比較し、24か月時点(76%、31/41人)では40ポイント以上を達成した乳児の割合が多くなった。I型SMAの自然歴においては、CHOP-INTENDスコアで40ポイントを達成することは稀だとしている。
有害事象および重篤な有害事象は、これまでと同様だった。主な有害事象は、上気道感染(54%)、肺炎(46%)、発熱(44%)、便秘(29%)、上咽頭炎(17%)、気管支炎(15%)、下痢(15%)、鼻炎(12%)。主な重篤な有害事象は、肺炎(39%)および呼吸困難(7%)だった。休薬や治療中止に至った薬剤関連の有害事象は認められなかったとしている。
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