■22年度以降に全国展開へ
高齢者のポリファーマシー対策をめぐっては、学会から複数のガイドラインが出されているが、各医療機関が対策を進めるに当たっての運用が明確に示されていなかった。
厚労省は、19年に国として初めて高齢者の特徴に配慮した薬物療法を実践するための基本的な留意事項をまとめた「高齢者の医薬品適正使用の指針」を策定したが、先進的な取り組みを行う好事例施設が一部あるものの、多くの施設では取り組みが遅れているのが現状だ。
厚労省が病床数100床以上の5369施設を対象に実施したアンケート調査では、ポリファーマシーの業務手順書を整備している医療機関が6.1%、個々の患者に対するポリファーマシー対応のため特別なカンファレンスを実施している医療機関が4.8%にとどまることが判明。手順書やマニュアルを作成している医療機関の少なさが課題として浮き彫りになった。
厚労省は、医療機関がポリファーマシー対策を始めるに当たって活用できる業務手順書などのスタートアップツールが必要と判断。3月には、指針の内容から実践へと促すための手順書「病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」を作成した。
今年度は1200万円を予算計上し、モデル医療機関数施設で手順書の実用性や課題を確認する1年間のモデル事業を開始する。現在、医療機関の公募を行っている。
モデル医療機関での取り組み結果は学会で発表し、ポリファーマシー対策を始める医療機関のスタートアップツールとしての有用性を周知する。今年度末には高齢者医薬品適正使用検討会で結果をまとめて報告する予定だ。
厚労省は、モデル事業の評価について「結果として薬剤を減らせたからといって、ポリファーマシー対策になったとは言えないところもある」と説明。
多くの医療機関では、対応が未着手である状況から、多職種連携による人員体制や、病棟横断的な専門チームなどにポリファーマシー対策の視点を取り入れるなど、チーム体制の整備が最優先課題との認識を示す。「全く取り組みを行っていない医療機関であれば、チームづくりがどこまでできたかなどを発表してもらい、今後の対応策につなげたい」としている。
22年度以降には、全国の医療機関が業務手順書を活用できるようにし、厚労省の業務手順書を参考に自施設でも手順書を作成するなど自主的な取り組みにつなげる。また、病院や薬局が連携した地域でのポリファーマシー対策では、薬剤師がチームづくりで中心になるとして、薬剤師による積極的な関与を促していく方針である。