LED技術で効率的にビタミンD生成する治療装置を開発したい
名古屋大学は4月15日、発光ダイオード(LED)を用いたショートレンジの紫外線(UV)を低エネルギーで副作用少なく照射することで、閉経後骨粗しょう症モデルである卵巣摘出マウスで血清ビタミンDレベルを増加させ、骨強度を改善させたことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部附属病院リハビリテーション科の西田佳弘病院教授、整形外科の落合聡史医員らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。
画像はリリースより
骨粗しょう症およびそれに関連する骨折は、生活の質の低下、身体的危害のリスクの増加、および重大な経済的負担に関連している。効率的で安価、そして身体への侵襲が最小限の新しい装置を開発できれば、骨折に伴う寝たきり状態を防ぐことで健康寿命を延ばすことができ、また手術を必要とする患者数を減らすことで医療費を削減することができる。
ビタミンDは、骨代謝の中心的な役割を果たす分子であり、体内のビタミンDの90%は日光や紫外線に暴露された皮膚から生成される。ビタミンDは骨代謝に重要だが、骨粗しょう症の年配の女性の大多数は、外出する機会の減少とそれに伴う日光浴の減少のために、ビタミンDが不足していると報告されている。また、ビタミンDは高齢者だけでなく閉経後の女性にも不足しているという報告がある。これまで、骨粗しょう症を治療するための医療機器は開発されていない。
研究グループでは、骨粗しょう症の予防と治療を目的として、発光ダイオード(LED)技術を用いて体内で効率的にビタミンDを生成する治療装置の開発を目指している。今回の研究では、ショートレンジUV-LEDの照射が、閉経後骨粗しょう症のマウスモデルに対して十分なレベルの血清ビタミンDを供給し、骨粗しょう症を改善するかどうかを調査した。
ビタミンD欠乏マウス、UV照射で血清ビタミンD値が上昇
閉経後骨粗しょう症モデルを作製するために卵巣摘出術(OVX)が適切に行われたかどうかを評価し、C57BL/6雌マウスにおいてOVX後に骨の変化が何週間後に生じるかを調査。この結果によって、本実験におけるUV照射のタイミングを決定した。結果的に、OVXの8週間後が、同実験でのUV照射の適切なタイミングであると考えられた。
C57BL/6雌マウスは、4つのグループ(UV照射なしのビタミンD充足群(Vit.D+ UV-)、UV照射ありのビタミンD充足群(Vit.D+ UV+)、UV照射なしのビタミンD欠乏群、(Vit.D- UV-)、UV照射ありのビタミンD欠乏群(Vit.D- UV+))に分けられた。
すべてのマウスは16週齢で卵巣摘出をされた。血清ビタミンDの値は、Vit.D- UV-と比較してVit.D- UV+で増加。骨幹端の皮質骨の厚みは、照射開始後24週間でVit.D- UV-と比較して Vit.D- UV+で有意に増加した。大腿骨の骨強度試験では、Vit.D-UV-と比較してVit.D- UV+で剛性が増加した。組織評価では、μCT検査の結果と同様に皮質骨はVit.D- UV+のほうがVitD- UV-よりも厚みを認めた。
新規骨粗しょう症の治療概念を備えたモダリティ、医療費削減の可能性も
LEDデバイスを使用したショートレンジUV照射は、ビタミンDの血清レベルを上昇させ、骨強度の増加につながる。これまでのところ、骨粗しょう症の治療アプローチは、運動、日光浴、および薬物療法に限定されている。骨粗しょう症の治療装置は、新しい骨粗しょう症の治療概念を備えたモダリティであり、さらに医療費を削減する可能性があるという。
また、小型で持ち運び可能なデバイスとして開発できるため、総合病院から在宅医療まで、臨床現場のさまざまな状況で簡便に使用できることが期待される。ショートレンジUV-LEDデバイスを使用した治療は、骨粗しょう症に有効な新しい治療アプローチとなる可能性がある、と研究グループは述べている。
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・名古屋大学 プレスリリース