患者の社会経済的要因だけでなく、歯科医院側の要因は?
東京医科歯科大学は4月14日、定期歯科健診受診の要因として歯科医院側の要因が強く影響することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科健康推進歯学分野の相田潤教授の研究グループと、愛知学院大学、九州大学、国立保健医療科学院、明倫短期大学、大阪歯科大学、深井保健科学研究所との共同研究によるもの。研究成果は、「International Journal of Environmental Research and Public Health」に掲載されている。
画像はリリースより
歯科医院への定期健診の受診に影響する要因は、患者個人要因に焦点を当てた研究が大部分であり、教育歴や収入といった社会経済的要因の関連が多く報告されてきた。一方で、歯科医院側の要因は十分に検討されていなかった。そこで今回、研究グループは、歯科健診受診に影響する要因に、患者個人の年齢や性別、教育歴や経済状態に加え、歯科医院側の要因として、歯科衛生士数、歯科衛生士専用ユニットの有無、歯科保健指導の時間(一般的に、歯科衛生士が存在するほど長い)との関連を調べた。
歯科衛生士の人数、歯科保健指導の時間、歯科衛生士専用ユニットの有無と関連示す
8020推進財団が2014年に実施した「歯科医療による健康増進効果に関する調査研究」のデータを使用。同研究は歯科医院を対象とした調査と患者を対象とした調査の2つの調査から構成され、1,181歯科医院の1万2,139人の患者を対象とした。患者-歯科医院-都道府県の階層構造を考慮した3レベルのポアソン回帰分析を用いて、歯科衛生士関連要因と患者の定期歯科健診の受診行動の関連を検討した。
解析に含められた1万2,139人の歯科患者(平均年齢55.4歳、男性35.7%、女性64.3%)のうち、治療に通っている患者は63.0%、定期検診を受けている患者は37.0%であった。解析の結果、患者個人の年齢や性別、教育歴や経済状態を調整したうえでも、「歯科衛生士専用ユニットがある」「歯科健康教育に20分以上かけている(0分と比べて)」「歯科衛生士が3人以上いる歯科医院(0人と比べて)」の歯科医院で定期検診を受けた患者の存在率比(prevalence ratio(PR))は、それぞれ1.17(95%信頼区間[CI]:1.06-1.30)、1.25(95%CI:1.07-1.46)、2.05(95%CI:1.64-2.56)と有意に高い結果となった。
また、患者が定期歯科健診を多く行っている歯科医院に移ると、定期健診をするようになる確率は1.69倍に増加することが推定されたという。
患者教育だけでなく、歯科衛生士の増員や働き方の改革も
定期歯科健診の受診行動に関連する要因として、個人の年齢や性別、社会経済的要因などに加え、歯科医院側の要因として、歯科衛生士数が多いこと、歯科衛生士専用ユニットがあること、歯科保健指導の時間が長いことの強い関連が示された。「歯科定期健診の受診は健康日本21などの政策にも盛り込まれているが、これを促進するためには、患者教育だけでなく、歯科医院における歯科衛生士の増員や働き方の改革が必要だと考えられる」と、研究グループは述べている。
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