エコチル調査参加の約10万組親子データを分析
山梨大学は4月6日、環境省の「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」のデータを解析し、インフルエンザワクチン接種とその後のインフルエンザ発症との関連を調査した結果を発表した。この研究は、同大学エコチル調査甲信ユニットセンター(センター長:山縣然太朗社会医学講座教授)の横道洋司准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Vaccine」に掲載されている。
画像はリリースより
インフルエンザは冬季に流行し、日本では患者数は毎年600~1200万人と推計されている。インフルエンザワクチンはインフルエンザ発症予防に効果があると考えられているものの、65歳未満の接種は任意となっている。
インフルエンザワクチンの効果については、人を対象とした大規模な疫学調査結果はほとんどない。また、インフルエンザ発症リスクが高いと考えられる年上のきょうだいがいる子ども、保育園に通う子どもに対する効果のデータもほとんど見られない。1度感染したことがある子どもはある程度インフルエンザウイルスに対して免疫を有していると考えられるが、そのような子どもに対するインフルエンザワクチン効果についてのデータもない状況だ。
今回の研究は、エコチル調査のデータを使って、これらの子どもに対するインフルエンザワクチンの効果を科学的に解析する目的で実施。今回は、エコチル調査に参加している約10万組の親子を対象としたデータを分析した。
インフル感染後にワクチン接種、3歳で21%発症予防
インフルエンザワクチン接種の有無については、0.5歳、1歳、2歳の調査票から、インフルエンザ発症の有無については1歳、1.5歳、2歳、3歳の調査票からデータを収集。インフルエンザワクチンを接種した子どものインフルエンザ発症率とインフルエンザワクチンを接種していない子どもの発症率とを比較し、インフルエンザワクチン接種によって発症を何%抑えられたかを測定した。
また、インフルエンザに罹ったことのある子どもにインフルエンザワクチン接種が有効かどうかを調査。1.5歳までにインフルエンザに罹患したことがある子どもについて、2歳調査票でインフルエンザワクチン接種の有無を調べ、3歳調査票でインフルエンザの発症/非発症を調査・分析した。
結果、インフルエンザワクチンは1.5歳で21%、2歳で27%、3歳で31%の発症予防効果があった。発症リスクが高くなる「年上のきょうだいがいる子ども」に絞ると、1.5歳で25%、2歳で25%、3歳で30%発症を予防していた。同じく、発症リスクの高い「保育園に通っている子ども」は、2歳で21%、3歳で30%発症を予防していた。
インフルエンザウイルスに感染した後にインフルエンザワクチンを接種した場合は、3歳で21%の発症を予防していた。これらの数字はすべて統計学的に有意だった。
感染経験ありの子どもへもワクチン接種推奨、科学的根拠に
今回の研究は、3歳までのあらゆる立場の子どもについて、インフルエンザワクチン接種が推奨されることを示している。一方で、病院の診療録や抗体価測定などの生化学的データに基づく調査ではなく、両親に子どものインフルエンザワクチン接種とインフルエンザ発症の有無を記入してもらった調査であることに研究の限界があるとしている。
インフルエンザワクチンは現在、子どもに対しては任意接種となっている。ウイルスに感染し回復すれば免疫を付けたと考えられるため、インフルエンザワクチン接種は必要ないという意見もある。しかし、今回の研究からは、すでに感染したことのある子どもに対してもワクチン接種が推奨されるという科学的な根拠が示された。子どものインフルエンザ予防に役立てられることを願う、と研究グループは述べている。
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・山梨大学 プレスリリース