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わずか2週間で新型コロナウイルスを人工合成できる技術を開発-阪大ほか

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2021年04月14日 AM11:45

CPER法を新型コロナウイルスへの応用を検討

大阪大学は4月13日、Circular Polymerase Extension Reaction()法を用いることにより、わずか2週間で新型コロナウイルスを人工合成する新しい技術を確立したと発表した。この研究は、同大微生物病研究所の鳥居志保特任研究員、同感染症総合教育研究拠点の松浦善治特任教授(兼、微生物病研究所特任教授)、北海道大学大学院医学研究院の福原崇介教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Cell Reports」に掲載されている。


画像はリリースより

ウイルス研究では、ウイルスの遺伝子配列情報をもとに人工的にウイルスを合成する技術が確立され、治療法や予防法の開発に役立てられている。コロナウイルスでも、SARSウイルスやMERSウイルスの人工合成技術が開発されているが、複雑かつ高度な遺伝子操作技術と数か月もの期間が必要であり、限られた研究者しかコロナウイルスを人工合成できないという問題があった。しかし、次々と現れる変異ウイルスに対応し、かつ病原性の解明や治療法・予防法の開発を行うためには、迅速かつ簡便に感染性ウイルスを作出する技術の開発が求められている。

研究グループは今回、任意の遺伝子変異を素早く簡便に導入できる新型コロナウイルス人工合成技術を確立するため、PCRを利用した方法の開発に取り組んだ。デング熱を起こすデングウイルスなどが含まれるフラビウイルスでは、CPER法というPCRを活用した手法で、感染性ウイルスクローンを作出する技術が開発されている。このCPER法を新型コロナウイルスにも応用できないかと考えて研究を進めた。

約7日間で感染性の新型コロナウイルスを作出、遺伝子改変ウイルスも

新型コロナウイルスの遺伝子全長をカバーする9個のウイルス遺伝子断片とプロモーターを含むリンカー断片をPCRで増幅した。各断片が隣り合う断片と重なる領域を持つよう設計することで、もう一度PCRを行うと、10個の断片が1つにつながり、ウイルス遺伝子全長をコードする環状のDNAを作製できることがわかった。この環状DNAを新型コロナウイルスがよく増殖する培養細胞に導入すると、細胞の中でDNAをもとにRNAが合成され、さらにこのRNAをもとにウイルスが合成されて、約7日間で感染性の新型コロナウイルスを作出することができた。

すなわち、CPER法を用いることで、高度な遺伝子操作技術を用いずに、PCRのみで新型コロナウイルスの感染性DNAクローンを作製できることがわかった。さらに、GFPなどの蛍光タンパク質を導入したウイルスや、任意の遺伝子を変異させたウイルスも作出可能であることが示された。

新型コロナウイルスの研究開発の加速に期待

今回開発された技術により、従来数か月かかっていたウイルスの合成が大幅に短縮されることで、新型コロナウイルスの研究開発が加速化するとともに、世界中で出現するさまざまな変異を持つ新型コロナウイルスに対しても迅速に解析することが可能となる。

「人工的に外来遺伝子を組み込むなど遺伝子操作をしたウイルスを用いた研究は病原性解析や予防法・治療法の開発にも応用できることから、今後、新型コロナウイルス研究において中心的な役割を担うと期待される」と、研究グループは述べている。

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