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脳の神経系が安定して動作し続けられるメカニズムの一端を解明-京大

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2021年04月12日 AM11:30

抑制性ニューロンが大きな役割を果たしやすくするネットワーク中の位置取りは?

京都大学は4月9日、約1,000個の神経細胞の間での複雑な相互作用ネットワークのデザインに込められている、神経系が安定して動作し続けられるメカニズムの一つを解明したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科 下野昌宣准教授と同研究科 梶原基修士課程学生らの研究グループが、同大大学院情報学研究科 阿久津達也教授らとの共同研究として行ったもの。研究成果は、「PLOS Computational Biology」に掲載されている。


画像はリリースより

脳を含む多くの臓器は、大量の細胞から構成されている。脳神経系では、その細胞の非一様な分布に加えて、非一様なネットワークが、その機能を発揮する上で本質的な意味を持っている。また、脳を構成する細胞のうち、情報の主な担い手であるニューロンは、興奮性ニューロンと抑制性ニューロンの大きく2つに分類される。両者は、お互いに拮抗し合うことで、活動が停止することも、極端に発火が広がりすぎることも起こらないようにバランスを取っている。しかし、脳の最も進化的に新しい新皮質において、興奮性ニューロンの数に対し抑制性ニューロンの数は圧倒的に少ないため、一つひとつの抑制性ニューロンは一つひとつの興奮性ニューロンと比べて、大きな役割を果たさなくてはならない。過去の研究において、個々の抑制ニューロンの方が興奮性ニューロンの発火率が高い、つまり、たくさんの信号を出力しているということや、数個の細胞間での接続からの議論はあったが、大量の細胞が相互作用し合うネットワークの中での位置取りに関して、どのように、抑制ニューロンが大きな役割を果たしやすいデザインとなっているのかに関して、不明な点が多くあった。

これらの問題が不明であり続けていたのは、計測技術と分析技術が未成熟であることが原因と考えられた。そのため、まずは1,000個程度のニューロンから同時に活動を計測する必要がある。また、ニューロン間での相互作用は1msレベルの時間解像度で起きているため、高い時間解像度を要することから、相互作用を再構築し、そのネットワーク構造を分析する解析手法の準備も必要だ。

抑制性ニューロンは他の細胞の制御能力が高い位置取り、深い層でより優位

今回の研究グループは、両者を高い水準で統合することで、多細胞相互作用ネットワークの中での抑制性ニューロンの立ち位置の特殊性を解明した。特にネットワーク上での立ち位置を、他細胞を制御する能力の高さを測る指標を初めて適用して分析した。また、計測している脳領域を、過去に同研究グループが開発した3D計測脳領域を極めて正確に記録し、新皮質を層という脳表面からの深さに依存して分類されるサブグループの生理学的なラベルを付与する精度を高めた独自のパイプラインの上で分析を行なった。

その結果、特に興奮性ニューロンよりも抑制性ニューロンの方が他の細胞の制御能力が高い位置取りをしており、そのような抑制ニューロンの優位性は、深い層でより統計的に有意に観察されたという。

今回の知見が、E/Iバランスの崩れにより生じる病状の効果的な治療にも役立つ可能性

また、そこでは制御能力の点で、限られた数のニューロンを絞り出すことができており、この重要なニューロンの選択方法は、現実的な計算モデルの作成に役立つだけでなく、脳を刺激して、E/Iバランスの崩れにより生じる病状を効果的に治療することにも役立つと考えられる、と研究グループは述べている。

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