京都大学iPS細胞研究所などの研究グループは6日、ヒトiPS細胞などを用いて新型コロナウイルスに対する既存薬の抗ウイルス作用を確認したところ、閉経後骨粗鬆症治療剤の「ラロキシフェン」など2品目で効果が確認されたと発表した。同剤では、コロナウイルスが宿主細胞に侵入することを妨げる役割を果たしていることが分かった。研究成果は、7日付の欧科学誌に掲載された。
新型コロナウイルス、インフルエンザウイルス、エボラ出血熱などRNAウイルスは、世界的、局所的な大流行を引き起こし、繰り返し出現するものが多い。
そのため、研究グループは今回、複数の異なるRNAウイルスに共通して抗ウイルス作用を示す薬剤があれば、新たに出現した感染症にも有益な可能性があるとして、米国食品医薬品局(FDA)が承認した薬剤500品目を対象に抗RNAウイルス活性を示す薬剤のスクリーニングを実施。
具体的には、スクリーニングに適したヒトiPS細胞にRNAウイルスの一種であるセンダイウイルスを感染させ、この細胞に500品目を投与した結果、30品目で抗ウイルス作用を確認した。
その中で、神経系、循環器系に影響が少ない薬剤としてラロキシフェン、ピオグリタゾン、リファンピン、プランルカスト、ジロートンの5品目を抽出。これら5品目について、新型コロナウイルスとエボラウイルスに対する抗ウイルス作用を評価した結果、閉経後骨粗鬆症治療剤のラロキシフェンは両ウイルスに対して、2型糖尿病治療剤の「ピオグリタゾン」は新型コロナウイルスに抗ウイルス作用を示した。
ラロキシフェンなど選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)については、新型コロナウイルスが宿主細胞に侵入するステップを阻害することも確認した。
新型コロナウイルスに対する抗ウイルス作用を示した薬剤について、同研究所は「今後出現する新たなRNAウイルス感染症に治療効果を発揮する可能性がある。複数のモデルで慎重に有効性を明らかにすることで臨床応用が期待される」としている。