愛知医科大学大学院医学研究科臨床感染症学教授の三鴨廣繁氏は4月1日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療について、「抗ウイルス薬はできるだけ早く使った方がいい」と強調した。製薬会社ギリアド・サイエンシズが開いたセミナーで発言した。
三鴨廣繁氏(ギリアド・サイエンシズ提供)
COVID-19の治療薬に関して国内では、抗ウイルス薬の「ベクルリー」(一般名:レムデシビル)、抗炎症薬の「デカドロン」(一般名:デキサメタゾン)のみが承認されている。三鴨氏はレムデシビルについて「当初は重症患者に使う薬だと多くの人が認識していたことから、現在でも一部の臨床現場でそのような誤解がある」と指摘した。厚生労働省は1月、米国国立衛生研究所(NIH)と米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)による国際共同第3相試験Adaptive Covid-19 Treatment Trial(ACTT-1試験)の結果を踏まえ、レムデシビルの中等症患者への投与を認めている。三鴨氏は、重症化リスクが高い症例は急速に重症化し、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)症例に至ると50%以上の確率で救命困難になるとのデータを提示した上で、「抗ウイルス薬使用のタイミングは重症化する前が最適だ」とした。
レムデシビル群、低流量酸素吸入を受けていた患者の死亡率を70%減少
三鴨氏は、ACTT-1試験についても改めて解説。試験の結果を踏まえ、「レムデシビルは、低流量の酸素補給を受けていた患者で、人工呼吸装着や死亡に至った患者の割合をプラセボ群と比べて減少させた」と病態進行の抑制効果を説明した。また死亡率の低下について、「レムデシビル群では、ベースラインで低流量の酸素補給が必要な患者の死亡率を70%減少させた」とした。
同試験は、18歳以上のCOVID-19陽性者1062人を対象に多施設国際共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照で実施したもの。主要評価項目には回復までの期間が置かれ、レムデシビル群で回復への期間が5日短縮されたことが添付文書改訂の根拠となった。
三鴨氏はまた、治療薬となりうる候補の薬について、「アクテムラ」(一般名:トシリズマブ)や「アビガン」(一般名:ファビピラビル)、「ストロメクトール」(一般名:イベルメクチン)などで臨床試験が進んでいることを紹介しつつ、「確立した治療法はない。その中で医療者は工夫しながら(適応外処方含め)薬を使っている」と臨床現場での治療の現状を述べた。
なおイベルメクチンをめぐっては、海外から個人輸入し、医療機関を介さずに独自判断で服用するケースが散発しており、安全性の観点からも問題になっている。WHOは3月31日、イベルメクチンについて「臨床試験内のCOVID-19の治療にのみ使用することを推奨する」とした勧告を公表。現在あるエビデンスは不十分で、「決定的ではない」としている。
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・ギリアド・サイエンシズ株式会社 プレスリリース