EA群18例・HC群22例の便を遺伝子解析、腸内細菌叢の多様性など検証
関西医科大学は4月5日、鶏卵アレルギーを持つ小児患者と同年代の健康な小児の腸内細菌叢を比較し、前者では腸内細菌叢の多様性が低下していること、腸内細菌叢に占める酪酸産生菌の割合が有意に低下していることを発見したと発表した。この研究は、同大小児科学講座(金子一成主任教授)の山岸満医師、同赤川翔平講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Allergy」に掲載されている。
画像はリリースより
厚生労働省の発表によると、花粉症やぜんそく、食物アレルギーなどのアレルギー疾患は日本人の2人に1人が罹患しているとされている。しかし、その発生メカニズムにはまだ解明されていない部分が多く、根本的な治療法の開発には至っていない。
一方、短鎖脂肪酸をはじめとする腸内細菌の産生物は、制御性T細胞の分化誘導などを介して免疫寛容に重要な役割を担っていることがわかっている。
今回、研究グループは、腸内細菌叢の乱れがアレルギー疾患の発症に関与している可能性に注目。小児鶏卵アレルギー(egg allergy:EA)患者群18例(EA群:男児13例、年齢中央値3.1歳[四分位範囲1.5-5.5])、健康小児(HC)群22例(HC群:男児12例、年齢中央値4.0歳[四分位範囲2.9-6.1])の便を遺伝子解析にかけ、腸内細菌叢の多様性、構成菌目、酪酸産生菌の割合を検証した。
「腸内細菌叢の多様性」「酪酸産生菌割合」EA群で有意に低い
検証の結果、EA群・HC群の両群において、年齢・性別による差はなかった。また、腸内細菌叢の多様性についてはEA群で有意に低いことを確認。さらに、酪酸産生菌割合もEA群で有意に低いことがわかった(2.3%[1.0-5.2]vs.6.9%[2.5-9.6], p=0.013)。
構成菌目は、EA群においてEnterobacteriales目の割合が高く(17.0%[9.5-22.3]vs.1.8%[0.9-10.9], p=0.029)、Lactobacillales目の割合が低い(7.1%[3.6-10.1]vs.11.5%[7.5-18.5], p=0.012)、という結果だった。
今回、鶏卵アレルギーを有する小児患者の腸内では、健康小児と比較して酪酸産生菌が減少していることが明らかになったことから、プレバイオティクスやプロバイオティクスなどを用いて腸内細菌叢をより良い状態に改善させることが、食物アレルギーの新しい予防法・治療法の開発につながるものと期待される、と研究グループは述べている。
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