感染対策による社会活動の制限や経済への影響が歯の痛みに与える影響は?
東京医科歯科大学は4月1日、新型コロナウイルス流行の影響を受け社会経済状況が悪化した人は歯の痛みを訴えることが多く、精神的ストレスがその主な中間因子であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の松山祐輔助教、健康推進歯学分野の相田潤教授の研究グループが、大阪国際がんセンターの田淵貴大副部長らと名古屋大学との共同研究として行ったもの。研究成果は、「Journal of Dental Research」のオンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
新型コロナウイルス感染症対策として社会活動が制限され、経済への影響が懸念されている。世帯収入の減少や失業など社会経済状況の悪化は、口腔の健康にも悪影響を与える可能性がある。そこで研究グループは、新型コロナウイルス感染症の影響による社会経済状況の悪化と歯の痛みの関連を明らかにすることを目的として今回の研究を実施した。
世帯収入減は1.42倍、仕事減少は1.58倍、失業経験は2.17倍、歯の痛みが多い
研究グループは、2020年8月から9月に日本全国の15~79歳男女を対象として実施された大規模なインターネット調査であるJACSIS研究(Japan COVID-19 and Society Internet Survey)の回答者 2万5,482人のデータを分析。新型コロナウイルス感染症の影響による世帯収入の減少、仕事の減少、失業と直近1か月の歯の痛みの関連を、その他の背景因子を考慮した多変量ロジスティック回帰分析で検証した。さらに、世帯収入の減少と歯の痛みの中間因子を媒介分析で検証した。
その結果、歯の痛みは回答者の9.8%にみられ、世帯収入の減少、仕事の減少、失業が歯の痛みに統計的に有意に関連していた(それぞれオッズ比 [95%信頼区間]は 1.42 [1.28, 1.57]、1.58 [1.41, 1.76]、2.17 [1.64, 2.88])。さらに、世帯収入の減少と歯の痛みの関連は、精神的ストレス(21.3%)、歯科受診の延期(12.4%)、歯磨きの減少(1.5%)、間食の増加(9.3%)が中間因子であることが明らかになった。
今回の研究で、新型コロナウイルスの影響で社会経済状況が悪化した人は歯の痛みが多いことが明らかになった。社会経済状況の悪化が精神的ストレスや健康行動の変化につながり、歯の痛みを引き起こした可能性がある。歯科疾患は最も多い病気の1つとして知られ、日本にも4000万人近くの人が治療を必要とするむし歯(詰め物が外れた状態なども含む)を有しており、コロナ禍で痛みが強く出る可能性もある。研究グループは、「新型コロナウイルスによる収入の減少や失業など経済的影響に対する政策が、歯科疾患の悪化を回避することにつながる可能性があると期待される」と、述べている。
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・東京医科歯科大学 プレスリリース