虚血性心疾患後の腎機能維持・改善は重要な課題
東北大学は4月1日、急性心筋梗塞患者において、発症後の運動量(身体活動量)を高く保つことが腎機能低下の抑制につながることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科内部障害学分野の佐藤聡見大学院生(研究当時)と上月正博教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Cardiology」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
急性心筋梗塞等の虚血性心疾患を発症すると、その後の腎機能が低下しやすいことが報告されている。さらに急性心筋梗塞患者が腎機能障害を併存するとその後の総死亡率や心血管関連死が増加することもわかっており、急性心筋梗塞患者の腎機能を維持・改善する治療法の確立は非常に重要な課題となっている。
これまでに研究グループは、運動療法による腎機能の保護効果に着目し、心臓カテーテル治療および入院中の自転車こぎ運動あるいはトレッドミルを含む心臓リハビリテーションプログラムを実施した急性心筋梗塞患者において、発症後の身体活動量を高く保つことが腎機能低下の抑制につながることを報告した。しかし、既報は単施設かつ調査期間が短い検証であったことから期間を延長した際の身体活動量の影響は不明であり、また、元々慢性腎臓病を合併している患者としていない患者で同様の影響が得られるか否かも明らかになっていなかった。そこで今回、研究グループは、多施設共同研究により発症後6か月間の縦断的な調査を実施。急性心筋梗塞患者において、発症後の運動量(身体活動量)を高く保つことが腎機能低下の抑制につながることを明らかにした。
1日歩数とeGFR変化に有意な正の関係
研究グループは、急性心筋梗塞を発症し、経皮的冠動脈形成術および入院中の包括的な心臓リハビリテーションを実施した患者を対象として、退院後6か月間の身体活動量の評価と血液生化学検査、尿検査、心臓超音波検査、身体機能検査の評価を実施。身体活動量の指標としては、3軸加速度計内蔵の活動量計により記録した1日歩数を評価した。そして、腎機能の指標としては、食事や筋肉量などの影響を受けにくい血清のシスタチンCから算出した推定糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate; eGFR)を評価した。
その結果、1日歩数とeGFRの変化には有意な正の関係が認められ、急性心筋梗塞患者において発症後の身体活動量を高く保つことが腎機能低下の抑制につながることが明らかになった。さらに、慢性腎臓病の合併の有無により患者を分類して歩数とeGFRの変化との関係を検証した結果、慢性腎臓病合併の有無に関わらず、歩数の増加に伴い腎機能の低下が抑制されることが判明した。
研究グループは、「今回の研究結果により、急性心筋梗塞患者において重要な合併疾患である慢性腎臓病の進行抑制や発症予防のための方策として身体活動量管理の臨床的意義が明らかとなり、再発予防や生命予後改善に寄与する可能性があると考えられる」と、述べている。
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