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褐色脂肪細胞の体内時計障害が肥満を招くメカニズムの一端を解明-金沢大ほか

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2021年04月02日 AM11:45

体内時計の乱れが生活習慣病をもたらすのはなぜか

金沢大学は3月31日、褐色脂肪細胞の体内時計が障害されると太りやすくなることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医薬保健研究域医学系の安藤仁教授らの共同研究グループによるもの。研究成果は、「Molecular Metabolism」にAccepted Articleとして掲載されている。


画像はリリースより

ヒトを含む動物の行動や生理機能には、約24時間を1周期とする概日リズム()が認められ、生体の恒常性維持に役立っている。近年、この概日リズムの発振機構が解明され、個々の細胞において時計遺伝子群からなる体内時計が時を刻んでいることが判明した。この体内時計が乱れる、いわゆる時差ぼけの状態では、身体に不調をきたすが、慢性的に時差ぼけを繰り返すシフトワーカーでは、肥満や高血圧、糖尿病などの生活習慣病も発症しやすいことが知られている。しかし、体内時計が障害されるとなぜ太りやすくなるのか、その機序については十分にはわかっていない。

褐色脂肪細胞は、脂肪のエネルギーを熱に変えることで体温を維持する特殊な細胞であり、この細胞の機能は肥満度と関連することが報告されている。また、体温や褐色脂肪細胞の機能には概日リズムが知られている。そこで研究グループは、適切な熱産生には褐色脂肪細胞の体内時計が重要であり、その体内時計が障害された場合には太りやすくなるのではないかとの仮説を立て、詳細な研究を進めた。

褐色脂肪細胞の体内時計は脂肪のエネルギーを熱に変換するリズムを制御

研究グループは、褐色脂肪細胞で特異的に体内時計機能を欠損する遺伝子改変マウス(BA-Bmal1 KOマウス)を作製し解析した。すると、予想に反して、BA-Bmal1 KOマウスの体温の日内リズムは、体内時計機能が保たれた対照マウスとほとんど変わりがなく、通常食を与えた時には体重も同等だったことがわかった。しかし、BA-Bmal1 KOマウスでは褐色脂肪組織の温度が低く、対照マウスよりも行動量が多いうえに、骨格筋のシバリングも大であることが判明した。すなわち、BA-Bmal1 KOマウスでは褐色脂肪細胞の熱産生が低下しているために、代償的に行動量の増加やシバリングで体温を維持していることが示唆された。

また、対照マウスの褐色脂肪細胞では、脂肪の利用に関連した分子群の発現に概日リズムが認められた一方、BA-Bmal1 KOマウスではこのリズムが乱れており、細胞内のアセチルCoA量やエネルギー量も低下していた。さらに、高脂肪食を与えた場合には、BA-Bmal1 KOマウスは対照マウスよりも太りやすいことが明らかになった。

この結果から、褐色脂肪細胞の体内時計は脂肪のエネルギーを熱に変換するリズムを制御しており、このリズムが障害された場合に高脂肪食を摂取すると、より太りやすくなることがわかった。

新しい肥満の予防・治療法の開発に期待

現代は24時間社会であり、体に悪いとわかっていても不規則な生活を送らざるを得ない人がいる。体内時計の中枢(中枢時計)は視床下部にあり、その時刻は光刺激でセットされるが、中枢時計は睡眠・覚醒のリズムも制御することから、そのような人では中枢時計の乱れはやむを得ない。「一方、褐色脂肪細胞の体内時計であれば、適切な食事習慣や薬物治療などにより整えることができる可能性がある。研究成果は、新しい肥満の予防・治療法の開発につながることが期待される」と、研究グループは述べている。

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