小児の医療の質改善の取り組みに関連する報告数は少ない
大阪市立大学は3月29日、小児集中治療室における医療の質向上について記述した文献を調査し、質改善の論文数は経年的に増加しているものの、研究報告の質は必ずしも高くないことがわかったと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科医療の質・安全管理学の山口悦子准教授、稲田雄大学院生らの研究グループによるもの。研究成果は、「Pediatric Critical Care Medicine」に掲載されている。
画像はリリースより
日本のものづくりにおける継続的質改善(KAIZEN)は有名だが、残念ながら小児の医療分野での質改善の取り組みはあまり報告されていない。小児集中治療室では、重症な患者に対して複雑な医療をタイムリーに行う必要があるため、質改善の必要性および質改善の効果が大きいと考えられる。近年、小児集中治療室での医療の質の改善に関する報告が増えているが、それを系統的に評価した質の高い研究が今までなされていなかったため、小児集中治療室で行われている医療の質改善研究の全容やそれらの研究報告の質は不明だった。
質が高いと判断された研究は17%、質改善が行われた臨床領域はさまざま
研究グループは今回、小児集中治療室で行われている医療の質改善研究の全容やそれらの研究報告の質を評価するために、0~16(満点)のスケールで採点し、既存の文献の系統的評価を行った。その結果、分析対象として採用した158件の質スコアの中央値は11.0で、質が高い(スコアが14~16)と判断された研究は17%、質改善の研究を報告するためのガイドライン「Standards for Quality Improvement Reporting Excellence」を引用していた論文はわずか5%だった。質改善が行われた臨床領域はさまざまで、質改善の論文数は経年的に増加しているものの、研究報告の質は必ずしも高くないことがわかった。
この研究は、小児集中治療室で行われている医療の質改善の研究の全容や、それらの研究報告の質の問題を初めて明らかにした。「これをきっかけに、まだ取り組まれていない質改善の課題に注目が集まり、研究報告の質を高める機運となれば、小児集中治療室における医療の質改善の研究や実践がさらに推進すると期待される」と、研究グループは述べている。
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