iDMCによる非盲検下で実施のP3試験データレビュー結果に基づく決定
スイスのエフ・ホフマン・ラ・ロシュ社は3月22日、tominersenについて、顕性ハンチントン病(HD:Huntington’s disease)を対象に実施中の第3相GENERATION HD1試験で投与中止を決定したことを発表した。
ハンチントン病は、舞踏運動を主体とする不随意運動、精神症状、認知症を伴って発現する遺伝性疾患。CAGリピート配列が伸長した変異型ハンチンチン遺伝子から翻訳される変異型HTTが蓄積し、毒性を示すと考えられている。根治治療はなく、不随意運動や精神症状に対する対症療法が一般的。国内の患者数は令和元年度特定医療費受給者証所持者数が911人、有病率は人口10万人あたり0.7人と、欧米と比較して10分の1のまれな疾患とされている。
tominersenは、変異型を含むハンチンチンタンパク質(huntingtin protein:HTT)の産生を抑制するよう設計されたアンチセンスオリゴヌクレオチド。tominersenの国内開発は中外製薬が実施しており、日本からGENERATION HD1試験に参加している。
25か月間tominersenの有効性・安全性を評価する多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照P3試験
GENERATION HD1試験は、HDを対象に、およそ25か月間にわたりtominersenの有効性および安全性を評価する多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第3相臨床試験。試験参加者は、tominersen120mgを2か月ごと、または4か月ごとに髄腔内投与する群、プラセボ投与群にそれぞれ無作為に割り付けられた。同試験には、世界18か国から791人が登録されている。
今回の決定は、事前に計画された独立データモニタリング委員会(independent Data Monitoring Committee:iDMC)による非盲検下で実施した第3相臨床試験のデータレビュー結果に基づくもの。iDMCは、試験参加者に対する同剤の潜在的なリスク・ベネフィットプロファイルを踏まえ、今回の勧告を行った。同試験のデータレビューにおいて、tominersenに関する新たな安全性上の懸念は示されなかった。
今後、ロシュ社は、同剤およびプラセボの投与は行わず、試験参加者の安全性および臨床転帰についてフォローアップを継続する予定。ロシュ社は、今後第3相臨床試験のすべてのデータに基づく解析を実施した後に、得られた知見や今後の計画について、ハンチントン病のコミュニティと共有する予定だとしている。
同試験の詳細なデータ解析により次のステップが明らかになるまでの間は、tominersenの非盲検延長試験(GEN-EXTEND試験)における投与を一時中断とする。なお、tominersenの第1相PK/PD試験(GEN-PEAK試験)および自然経過観察試験は継続するとしている。
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・中外製薬株式会社 ニュースリリース