Meflin陽性細胞の脂肪組織での役割は不明だった
富山大学は3月26日、間葉系幹細胞のマーカー遺伝子を発現する細胞に遺伝子組み換え酵素を発現するマウスを作製し、間葉系幹細胞から脂肪細胞への分化の過程を追跡した結果を発表した。この研究は、同大学術研究部医学系内科学講座1の戸邉一之教授、桑野剛英医員らの研究グループと、同大学術研究部医学系分子神経科学講座、病態・病理学講座および京都大学との共同研究によるもの。研究成果は、「PLOS ONE」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
肥満は糖尿病などのさまざまな疾患の引き金となる。脂肪組織には、エネルギーを貯蔵する白色脂肪細胞のほかにも、熱をつくり体温の調節をしている褐色脂肪細胞や、寒冷刺激によって誘導される、白色脂肪組織の中にできる熱産生を行うベージュ脂肪細胞といった機能の異なる細胞が存在する。高脂肪食の過剰な摂取などによりエネルギー過剰状態となったとき、白色脂肪細胞はエネルギーを蓄え肥大化。それで対応できない場合には、脂肪細胞の前駆細胞が増殖するとともに、新たな脂肪細胞に分化し過剰なエネルギーに対応する。
近年、脂肪組織において、前駆脂肪細胞やそれよりさらに未分化な間葉系幹細胞が注目されており、そのマーカー遺伝子としてMeflinが有望な候補として報告されている。しかし、Meflin陽性細胞の脂肪組織での役割については、十分に研究されていなかった。
Meflin-CreERT2マウスを作製、Meflin系統細胞が、白色脂肪細胞以外にも分化することなどを明らかに
研究グループは、Meflin陽性細胞の細胞運命の解析を主な目的として、任意のタイミングで遺伝的改変が可能であるMeflin-CreERT2マウスを作製。このマウスとレポーターマウスを交配させ、Meflin陽性細胞でレポーター遺伝子を発現誘導できるマウスを作製し、Meflin系統細胞の細胞運命を解析した。
その結果、Meflin系統細胞が、白色脂肪細胞、褐色脂肪細胞、ベージュ脂肪細胞のいずれにも分化することを示した。また、Meflin系統細胞が、高脂肪食負荷による慢性炎症が起きている白色脂肪組織において、脂肪組織リモデリングに関与する王冠様構造を構成する細胞であることを示したという。
再生医療などの応用や、脂肪細胞への分化メカニズム解明に期待
今回の研究で作製されたMeflin-CreERT2マウスにより、Meflin陽性細胞について詳しく調べることができるようになった。間葉系幹細胞は細胞治療の要となる細胞であり、医療への応用が期待されている。脂肪組織には骨髄などに比べて豊富に間葉系幹細胞が存在するとされる。今回の研究成果は、再生医療などの応用や脂肪細胞への分化メカニズム解明に役立つと考えられる、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・富山大学 プレスリリース