糖尿病治療で問題視される皮膚合併症「インスリンボール」
愛媛大学は3月26日、抗生物質の1種であるミノサイクリンによるインスリンアミロイドの分解および毒性中間体の生成を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院理工学研究科の座古保教授らの研究グループが、東京医科大学茨城医療センター、佐々木研究所附属杏雲堂病院、日本電子株式会社、ノルウェー科学技術大学との国際共同研究として行ったもの。研究成果は、「Scientific Reports」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
糖尿病治療に用いられるペプチドホルモンの1種であるインスリンは、高温・酸性条件下でアミロイド凝集を形成することが知られている。アミロイド凝集はアルツハイマー病など、さまざまな病気の原因になると考えられている。これまでに共同研究グループは糖尿病治療患者のインスリン製剤注射部位にインスリンのアミロイド凝集が含まれる皮下腫瘍(インスリンボール)が形成される場合があることを見出してきた。インスリンボールの悪影響として、周辺組織への細胞毒性による壊死の症例が報告されており、糖尿病治療過程での皮膚合併症として注目されている。
興味深い事に、毒性インスリンボールを持った患者はミノサイクリン抗生物質の投与歴があり、これまでに研究グループはインスリンボールの毒性発現とミノサイクリンとの関係の可能性を見出してきた。しかしながら、インスリンアミロイド凝集に対するミノサイクリンの直接的な影響は不明だった。
インスリンのアミロイド凝集をミノサイクリンが分解、一時的に高毒性分解物生成
今回、研究グループは、ミノサイクリンと反応させたヒトインスリンおよびインスリン製剤のアミロイド凝集に関して、構造・細胞毒性の評価を行った。その結果、ミノサイクリンによってインスリンアミロイド凝集は分解され、一時的に高毒性分解物が生じる事が示唆された。
「今回の研究により、体内に存在するインスリンボールの毒性発現メカニズムについても明らかになると期待できる」と、研究グループは述べている。
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・愛媛大学 プレスリリース