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HBVの高感度抗原定量検査法を開発、従来法より安価・簡便・高再現性-名古屋市立大ほか

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2021年03月25日 PM01:15

従来法で検出不能なHBeAg陰性例が多く、高感度測定法開発が望まれてきた

名古屋市立大学は3月22日、B型肝炎ウイルス()を検出する「高感度HBcrAg定量検査法」を新たに開発したと発表した。これは、同大大学大学院医学研究科の井上貴子講師、熊本大学大学院生命科学研究部の田中靖人教授が、株式会社先端生命科学研究所、富士レビオ株式会社との共同研究として行ったもの。研究成果は、「Journal of Hepatology」電子版に掲載されている。


画像はリリースより

HBVは、ヒトの肝細胞の核内で完全閉環二本鎖DNA(covalently closed circular DNA:)として存在し完全に取り除くことは困難であり、ウイルスの鋳型として残り続ける。肝細胞内のcccDNA量とその転写活性は、肝硬変・肝がんへの進行を予測するうえで重要な要素と考えられている。HBVの感染や治療の効果を測るHBVマーカーにはさまざまな種類があり、その1つである血清HBコア関連抗原(HBcrAg)は、肝細胞内cccDNA量や血中HBV DNA濃度と相関している。HBcrAgには3種類の抗原[HBc抗原(HBcAg)・22KDaプレコアタンパク(p22cr)・HBe抗原(HBeAg)]が含まれる。

B型慢性肝炎の治療では機能的治癒を目指し、HBVが体内にあることを示すHBs抗原の消失、さらにはウイルスの鋳型であるcccDNAの低下を目標とする。B型肝炎治療薬である核酸アナログ製剤はHBV DNAの複製を著しく阻害するため、治療中は血液中のHBV DNAの変動をとらえることが難しくなる。一方、HBcrAgは肝細胞内cccDNA量や転写活性を反映しているので、治療中のB型慢性肝炎患者のモニタリングに有用なマーカーだ。日本のB型肝炎キャリアの大規模コホート研究の結果から、高濃度(2.9Log U/mL以上)の血清HBcrAgは肝がん発生の独立した危険因子であることが判明した。ただし、HBcrAgを構成する抗原のうち、HBeAgが陰性の例では従来法では検出できない症例が多く、高感度のHBcrAg測定法の開発が望まれてきた。

特異度100%、感度は従来法より約10倍向上を確認

今回、新たに開発した「高感度HBcrAg定量検査法」では、検体前処理工程の改良検討を重ね、人の手に頼らない(用手法ではない)検査の全自動化を可能とし、処理にかかる時間を短縮した。また、コア関連抗原に対する血中抗体の不活化と同時に、3種類の異なる構造を持つコア関連抗原をより均質化し同時に測定できるようにしたことで、反応性向上と共にバックグラウンド反応も低下し、高い感度と特異度を実現した。

高感度HBcrAg定量検査法と従来法の比較を行ったところ、HBs抗原陰性血清491検体を用いて、高感度HBcrAg定量検査法のカットオフ値を2.1Log U/mLに設定した場合、特異度は100%(491/491)、感度は従来法より約10倍向上した。

HBV再活性化例も従来法より早期に陽性判定

HBVでは、いったんウイルスの増殖が抑えられても、ウイルスの鋳型であるcccDNAを完全に取り除くことは難しいため再活性する場合がある。全身化学療法や免疫抑制療法を始める前の検査で、再活性化のマーカーであるHBc抗体またはHBs抗体が陽性と判定され、HBV再活性化モニタリングの対象となった症例を抽出し、HBV再活性化と診断された13例(血液悪性腫瘍10例、固形がん・良性血液疾患・自己免疫疾患各1例)の検査を行ったところ、69%(9/13)がPCR法(HBV DNA定量法)よりも早期に高感度HBcrAg定量検査法で陽性と判定された。一方、全身化学療法や免疫抑制療法によりHBV再活性化を起こさなかった症例55例では、陽性と判定された症例はなかった。

cccDNAが低濃度であると予想されるHBe抗原陰性B型慢性肝炎症例のうち、HBV DNA持続陰性161症例の血清HBcrAgを、高感度HBcrAg定量検査法および従来法で測定した。161症例中、従来法では75.2%(121/161)、高感度HBcrAg定量検査法では97.5%(157/161)の症例でHBcrAgが検出された。すなわち、HBcrAg濃度が2.1-2.8Log U/mLである22.4%(36/161)の症例は従来法では検出できず、高感度HBcrAg定量検査法でのみ検出可能だった。

今回の研究により、新たに開発した高感度HBcrAg定量検査法の基礎性能は優れており、高感度かつ高い特異性を備えていることがわかった。全自動化により迅速測定が可能であり、外来通院中のB型慢性肝炎症例の核酸アナログ製剤治療効果判定に活用されることが期待できる。また、HBV再活性化のモニタリングにおいて、高感度HBcrAg定量検査法は血中HBV DNAの代わりとなりうるHBVマーカーとして、今後さらに臨床データの蓄積が望まれる、と研究グループは述べている。

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