ビフィズス菌がアラビアガムを利用して増殖するメカニズムは?
鹿児島大学は3月22日、アラビアガムを利用してビフィズス菌が増えるために必要な鍵酵素を発見し、その作用メカニズムを明らかにしたと発表した。この研究は、同大農学部食料生命科学科応用糖質化学研究室の佐々木優紀氏(大学院連合農学研究科2年)、藤田清貴准教授、北原兼文教授ら、理化学研究所の石渡明弘博士、森永乳業基礎研究所の研究グループによるもの。研究成果は、米国科学雑誌「Applied and Environmental Microbiology」に掲載されている。
画像はリリースより
現在、腸内環境を健全に維持する重要性が明らかになっており、ヨーグルトやサプリメントとしてビフィズス菌そのもの(プロバイオティクス)や、そのエサとしての難消化性オリゴ糖(プレバイオティクス)を摂取することの重要性が明らかになっている。
アラビアガム(アカシアゴム)はアカシア属の植物の樹液の粘質物。増粘多糖類やコーティング剤として食品や医薬品として利用されている高分子多糖類だ。特定のビフィズス(Bifidobacterium longum)を増やすプレバイオティクスの一つとして働くことがわかっており、「進化型プレバイオティクス」「持続型プレバイオティクス」としてサプリメント用途で販売されている。
ビフィズス菌がアラビアガムを利用して増殖することはわかっていたが、そのメカニズムはわかっていなかった。
アラビアガム末端の二糖を切断する酵素GAfase
今回の研究では、ビフィズス菌B. longumを増やすために必要不可欠な鍵酵素「GAfase」を世界で初めて発見。GAfaseは、アラビアガムの末端の二糖を切断する酵素だ。
この酵素によって切り出されたオリゴ糖を利用することで、ビフィズス菌が増える。また、切り出すことで他の酵素がアラビアガムの糖鎖の内部にアクセスしやすくなり、より多くのオリゴ糖を獲得できるようになることが明らかになったという。
GAfase遺伝子を持つB. longumを腸内に持つ・持たないで、アラビアガムの有効性が異なる可能性
今回の研究は、アラビアガムの複雑な糖鎖構造を分解する能力が、ビフィズス菌の特定の菌株が持つ鍵酵素「GAfase」に依存したものであることを詳細に解析したもの。これは、「GAfase」遺伝子を持つB. longumを腸内に持つ人と持たない人で、プレバオイオティクスとしてのアラビアガムの有効性が異なる可能性があることを意味しているという。
多彩な菌種から構成される複雑な腸内細菌叢において、他の細菌との関係も考慮する必要があり、さらなる研究が求められる、と研究グループは述べている。
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