コロナ流行前から慢性疾患で通院中の659人を対象に
東京医科大学は3月17日、新型コロナウイルス感染症の流行前に医療機関を定期受診していた659人の受療行動を分析し、その結果を発表した。この研究は、同大公衆衛生学分野の小田切優子講師、同大大学院医学研究科の高窪毅大学院生(博士)ら研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of General and Family Medicine」に掲載されている。
画像はリリースより
新型コロナウイルス感染症の第一波流行中で、緊急事態宣言の解除が検討され始めた2020年5月、研究グループは、関東地方在住の20~79歳の男女2,400人を対象に、医療機関の受療状況に関するインターネット調査を行った。対象者に「受診頻度の減少」「定期内服切れ」「持病の悪化」「電話・オンライン診療の活用」のほか、受診に関する要因について尋ねた。調査対象者のうち新型コロナウイルス感染症の流行前に外来を定期受診しており、内科慢性疾患で通院中の659人について解析した。
受診頻度の減少の人で、定期内服切れや持病の悪化が多い
その結果、「受診頻度が減少した」人の割合は37.8%で、「医療機関で感染することが怖い」こと、「東京在住」、「女性」などが受診頻度の低下と有意に関連していたことがわかった。一方で、「定期内服ができなくなった」人の割合は6.8%、「持病が悪化した」人の割合は5.6%、電話・オンライン診療を活用した人の割合は9.1%だった。受診頻度が減少した人の割合に比べて、定期内服ができなくなった人の割合が少なかったことから、長期処方等で対応が行われていた可能性がある。
受診に関する要因のうち「医療機関での感染恐怖」は、「受診頻度の減少」や「定期内服切れ」と有意な関連が認められた。さらに要因間の分析を行ったところ、「受診頻度の減少」の人に、「定期内服切れ」や「持病の悪化」が多かったことが明らかとなった。
必要以上の受療抑制が起こらないような対策を
今回の研究は、第1波流行中の受療行動を観察したものであり、その後、受療行動がどう変化しているのか注視するとともに、必要以上の受療抑制が起こらないような対策が必要だ。「通院の中断や病状悪化を防ぐためには、受療行動が変化しやすい集団への配慮や、特に医療機関での感染への恐怖の払拭・低減に努め、新型コロナウイルス感染症の流行下でも受診を継続しやすい環境を整備することが重要」と、研究グループは述べている。
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・東京医科大学 プレスリリース