HLA一致血縁者なし、骨髄・臍帯血バンク内にも適合ドナーおらず
東京医科歯科大学は3月18日、放射線感受性を有する重症複合免疫不全症(Artemis欠損症)に対してTCRαβ/CD19除去法による血縁者間HLA半合致移植を2020年11月に実施し、国内で初めて成功したことを発表した。この研究は、同大医学部附属病院小児科の森尾友宏教授、金兼弘和寄附講座教授、磯田健志助教の研究グループによるもの。
画像はリリースより
患者は東京都在住の1歳男児。生後5か月時に真菌(かび)の一種であるニューモシスチスによる重症肺炎発症を契機に精査の結果、重症複合免疫不全症(Artemis欠損症)と診断された。加療目的で2020年9月に同院に紹介入院となり、肺炎治療を行いながら、造血細胞移植の準備を行った。
しかし、HLA一致血縁者はおらず、骨髄・臍帯血バンクに適合ドナーも見つけることができなかったため、HLA半合致の母親からの移植を計画。現病が放射線高感受性を有するArtemis欠損症であることから、移植後に大量化学療法を用いる移植後シクロフォスファミド法は適応できないと判断された。
TCRαβ/CD19除去法による血縁者間HLA半合致移植を実施後、無事退院
その後、2020年11月(生後8か月時)に、骨髄非破壊的前処置の後、母親の末梢血幹細胞からCliniMAX Plus装置を用いてTCRαβ陽性T細胞とCD19陽性B細胞を取り除いた細胞による造血細胞移植を実施した。感染症、GVHDを含めた移植後早期の合併症を認めることなく、移植後2か月過ぎより、緩やかにT細胞ならびにB細胞の増加が確認され、全身状態良好にて移植後3か月時に退院となった。
研究グループは、「早期の造血細胞移植が必要にもかかわらず、HLA一致ドナーが見つからず、化学療法・放射線治療に高感受性を示す特別な配慮が必要な患者に対して、TCRαβ/CD19除去法の適応が望まれる。今後、本治療法の実行が可能な施設とも連携して本治療の経験の蓄積を行いたい」と、述べている。
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