肥満予防にデジタルツール活用の影響力を、10年間の論文でメタ解析
米国スタンフォード大学は2月24日、減量に関する約40の論文を解析した結果、減量管理のためにデジタルツールを使用することが、減量の成功に関連することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部のMichele L Patel博士研究員、米国退役軍人局のLindsay N. Wakayama氏、デューク大学のGary G. Bennett氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「Obesity」に掲載されている。
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米国成人の42%、全世界の13%が肥満であると考えられている。肥満予防を推進するため、アプリやウェブサイト、ウェアラブルデバイスなどデジタルツールを用いたセルフモニタリングがここ10年ほどで普及した。何を食べ、どれだけ動き、体重は変化したか、食事のカロリーはどれくらいかなどを日々記録することは手間ではあるが、デジタル化により簡便化されてきている。一部のデジタルツールは、目標までの達成度を円グラフなどで視覚的わかりやすく見せるなどの工夫をしている。
しかし、これらのデジタルツールの利用が減量成功にどの程度影響しているのかについて、これまで大規模に調査されたことはなかった。そこで研究グループは、2009~2019年に発表された減量のモニタリングに関する研究を、PubMedなど6つの論文データベースから探して分析し、その関連を調べた。
デジタルツールの使用、74%で体重減少幅の大きさと正の相関
メタ解析の対象は、肥満成人で、最低でもセルフモニタリング期間が12週間、6か月以上の体重経過が含まれている研究とした。最終的に解析対象となった39の研究には、29~56歳の8,232人(約7割が女性)、67のデジタルツールによるセルフモニタリングが含まれていた。
使用されたデジタルツールの種類は、多い順にウェブサイト66%、アプリ33%、ウェアラブルデバイス16%であった。また、デジタルツールでセルフモニタリングしていた内容は、体重が72%、食事が81%、運動量が82%だった。
デジタルツールによるセルフモニタリングと減量との関連を調べた結果、74%で体重の減少幅の大きさと正の相関が認められたという。また、対面/遠隔カウンセリングが含まれていた場合と、デジタルツールでのセルフモニタリングのみだった場合を比較した5つの研究の分析から、カウンセリングを受けたほうがよい結果だったとしたものが28%、悪かったとしたものが39%、差がなかったとしたものが33%だったこともわかった。
さらに、紙ベースの記録とデジタルツールでのセルフモニタリングによる達成率を報告している9つの研究、計34の比較を分析したところ、紙ベースよりもデジタルツール利用のほうが達成率が高いとしたものが56%で、紙ベースのほうが勝るとしたものは12%、差がないとしたものが32%だった。
今回の研究から、セルフモニタリングにデジタルツールを使用することが、減量の成功に関連していることが明らかになった。「今後、体重、運動量、カロリーのどれをモニタリングすることが減量と最も関連するのか、また人種によって影響に差が生じるのかを検討する予定だ」と、研究グループは述べている。