危険因子「下顎骨原発性骨内がん」「頸部リンパ節転移がレベルIVおよびV」「転移リンパ節に節外浸潤」
東京医科歯科大学は3月16日、口腔扁平上皮がんにおける遠隔転移症例の解析を行い、下顎骨原発性骨内がんであること、頸部リンパ節転移がレベルIVおよびVに認めること、そして転移リンパ節に節外浸潤を認めることが遠隔転移の危険因子であるという結果を得たと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科顎口腔外科学分野の原田浩之教授と富岡寛文助教らの研究グループによるもの。研究成果は、国際科学誌「Scientific Reports」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
近年、口腔扁平上皮がんに対する各種治療法の進歩により、原発巣および頸部リンパ節の制御率、いわゆる局所制御率は向上している。しかし、局所が制御されているにもかかわらず遠隔転移をきたす症例は減少せず、これが生存率低下の要因となっている。口腔扁平上皮がんの予後を改善させるためには、このような局所制御例における遠隔転移のハイリスク症例を早期に発見し、効果的な治療を行うことが必要不可欠であると考えられている。これまで報告されてきた遠隔転移の研究は、限られた症例数の報告や、局所制御が得られていない症例も混在した報告などであり、適切な危険因子の抽出には疑問が持たれていた。
局所制御が得られた口腔扁平上皮がん887例を対象に解析、遠隔転移は36例
研究グループは、局所制御が得られた口腔扁平上皮がん887例を対象に解析を実施。その結果、遠隔転移は36例(4.1%)に認めた。
もともとの原発巣の部位を検討した結果、遠隔転移の発生は舌が最多であり、519例中19例に遠隔転移を認めたが、その発生率は3.7%に留まっていた。一方で下顎骨内に発生する原発性骨内がんの遠隔転移率は25.0%であり、他の部位と比較しても極めて高いという結果が得られた。また遠隔転移臓器は肺が最多であり、以下は骨、肝と続いた。
続いて、原発巣部位を含めたさまざまな臨床病理学的データを元に統計解析を行い、遠隔転移の危険因子を抽出。統計学的に有意な危険因子として、下顎骨原発性骨内がんであること(危険率7.200)、レベルIVおよびレベルVに頸部リンパ節転移を認めること(危険率6.763)、転移リンパ節に被膜外浸潤を認めること(危険率8.036)、以上の3つの因子が同定された。
危険因子「下顎骨原発性骨内がん」は新規の知見
これまで口腔扁平上皮がんにおける遠隔転移の危険因子は、頸部リンパ節転移様相に関連すると報告されてきた。すなわち転移数、転移部位、転移の広がりなどだ。同研究においても、過去の報告を裏付ける結果も得られている。
さらに、887例という多数の症例についてさまざまな角度から検討した結果、下顎骨原発性骨内がんが遠隔転移の危険因子であるということが新たにわかった。これらの危険因子を有する症例を治療する際には、局所制御し得たとしても、遠隔転移をきたす可能性を常に考慮して治療計画を立案していくことが、治療成績の向上につながるものと考えられる、と研究グループは述べている。
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