厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症回復者の血漿を用いた特殊免疫グロブリン製剤の国内供給体制を整備する。原料血漿確保に向けては採血事業者の日本赤十字社に依頼し、回復者からの血漿採取に伴う医療機関との連携や抗体価検査など必要な経費を補助する。さらに国内血漿分画製剤メーカー1社を選定し、特殊免疫グロブリン製剤の製造体制を支援する。厚生労働省は「血漿採取に協力する回復者のリクルートが課題」とし、周知の仕方など検討を進めている。
回復者血漿療法をめぐっては、新興・再興感染症に有望との研究成果が示されており、欧米では迅速に原料血漿を確保、製造できる体制整備が進められている。新型コロナウイルス感染症の再流行が懸念され、治療法も限られる中、2020年度第3次補正予算で「特殊免疫グロブリン製剤供給体制整備支援事業」として9億9000万円を計上。今年度から国内供給体制の整備に着手する。
実施スキームとしては、日赤が医療機関と連携し、新型コロナウイルス感染症回復者から採血。血漿を採取する。その際、受付システムや安全対策、回復者血漿療法として使えるか調べる抗体価検査、輸送・保存など採血事業者として必要な経費を補助する。
治療に使えることを確認した回復者血漿については血漿分画製剤メーカーに輸送し、特殊免疫グロブリン製剤として製造を行う。既存の免疫グロブリン製剤とは異なり、少量の原料血漿を用いた製造となるため、日本血液製剤機構、日本製薬、KMバイオロジクスの国内メーカー3社から1社を公募し、製造ラインの整備や抗体価など、品質試験の整備に必要な経費を補助するとしている。
健康な人からの献血事業ではなく、回復者からの血漿採取は国内初の取り組みとなる。厚労省は2月に回復者から血漿を採取するための指針を発表。対象は同意を得た20~69歳で、過去に新型コロナウイルス感染症の軽症から中等症と診断され、症状が消失してから2週間以上経過などの条件を満たした人とし、臨床試験の枠組みで行うこととされた。
採血に協力する回復者が十分に集まるかが最重要課題となる。今後、日赤や医療機関と募集に向けた周知方法を検討していくほか、海外では武田薬品やCSLベーリングなどが参画した回復者血漿療法のアライアンスがあるため、連携を模索する。