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希釈式自己血輸血で、心臓外科手術後の輸血使用率・使用量ともに減少-京大

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2021年03月17日 AM11:30

2016年承認の希釈式自己血輸血、まだ日本での効果検証がなかった

京都大学は3月16日、日本の行政データベースを用いて、2016~2019年に心臓血管外科手術を受けた患者の輸血使用率および輸血使用量を、希釈式自己血輸血を受けた患者群と受けていない患者群で比較した結果、希釈式自己血輸血患者群で、ともに減少効果を認めたことを発表した。この研究は、同大医学研究科の今中雄一教授、國澤進准教授、奥野琢也博士課程学生らの研究グループによるもの。研究成果は、「PLOS ONE」に掲載されている。


画像はリリースより

心臓外科手術は最も保存血液を投与する手術だ。保存血液は献血に頼っているため限りがあり、また使用量が増えるほど副作用のリスクも上がるため、欧米では希釈式自己血輸血を活用し、血液製剤の使用を工夫している。体格の大きな欧米では、800ml以上の大量の血液を採取して自己血として輸血することが推奨されているが、小柄な日本人ではそのような大量の血液採取を行うのは容易ではなく、推奨量も不明だ。というのも、この手法が日本で保険適用となったのは2016年で、まだあまり浸透しておらず、日本人における効果の検証をされていないのが現状だ。

比較解析で赤血球製剤使用率・使用量ともに有意に減少を確認

今回、研究グループは、日本の行政データベースを用いて、2016~2019年に心臓血管外科手術を受けた患者の保存血液使用率および保存血液使用量を、希釈式自己血輸血を受けた患者(希釈式自己血輸血患者群)と受けていない患者(コホート群)で比較した。病院情報と患者情報を調整するために、解析には多段階傾向スコアマッチングを用いた。

その結果、保存血液の中で最もよく使われる赤血球製剤について、希釈式自己血輸血患者群では赤血球製剤使用率38.4%(コホート群:60.6%、p<0.001)、赤血球製剤使用量は3.5単位(コホート群:5.9単位、p<0.001)と減少効果を認めた。副次的転帰である輸血関連有害事象の発生や術後集中治療室滞在期間は、対照群と希釈式自己血輸血患者群で差を認めなかった。

コロナ禍の献血不足対策としても重要

日本人患者は欧米諸国の患者に比べて体が小さいため、先行研究で報告されているような大量の希釈式自己血輸血を行うことは困難だ。今回の研究の対象となった患者では、平均的な希釈式自己血輸血の量は欧米と比較して少なかったが、平均体重も少なかったため、良好な結果が得られたと考察された。

希釈式自己血輸血では、人工心肺開始前に採取した自己血は一般的に室温で保存され、術中に使用される。そのため、凝固関連因子(血小板、フィブリノーゲン、プラスミン-アンチプラスミン複合体、アンチトロンビン)を不活性化することなく正常範囲内で提供することができ、これは手術中の輸血戦略としては大きな利点だ。新型コロナウイルスの影響から献血の減少が深刻になっている地域もあり、効率的な保存血液の使用を検討する必要がある。「血液が足りない患者のもとへ、迅速かつ確実に保存血液を送るためにも、希釈式自己血輸血は重要な技術だと考える」と、研究グループは述べている。

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