「穴開きアクリルボックス」の使用を控えるようFDA勧告
広島大学は3月15日、気管チューブの挿管・抜管、口腔ケア、PCR検査など口腔・鼻腔からの飛沫による医療従事者の飛沫汚染リスクを減少させるための飛沫プロテクタを共同研究および商品化したと発表した。これは、同大大学院医系科学研究科麻酔蘇生学の佐伯昇准教授と同大学病院感染症科の大毛宏喜教授、同口腔総合診療科の西裕美診療講師と、株式会社エイチアールイーとの共同研究によるもの。
画像はリリースより
COVID-19による飛沫汚染対策として、医療従事者への個人防護具(PPE)の装着が推奨されている。気管挿管・抜管などの処置においては飛沫やエアロゾルが生じ、医療従事者や周囲に付着してしまう。一方、PPEを装着しての作業は医療従事者の体力消耗やコスト増大を招くうえ、PPEの表面や周囲に付着した飛沫のため脱衣時に汚染がひろがるリスクもある。
飛沫を防ぐため、穴の開いたアクリルボックスなどの方法が試みられたが、操作が困難、エアロゾル暴露を避けられない、消毒作業が必要になるといった問題のため、米国FDAからこれらの使用を控えるよう勧告が出された。そこで、研究グループは、医療従事者の上肢の動きを妨げず、飛沫・エアロゾルを拡散させにくい、消毒不要で汚染物と一緒に廃棄可能で、安全に脱衣が行えるなどの特徴を持つ飛沫プロテクタについて研究・考案し、商品化した。
処置後にプロテクタで医療廃棄物を包んで一括廃棄が可能
同プロテクタは、素材に帯電防止加工済みの透明ポリエチレンを用い、身体にまとわりつかず、低価格で、安全に焼却が可能な仕様とした。袋状の透明シートに首掛けと腕部分を付けエプロン型にし、広い作業空間を作ることで、医療処置を容易にするとともに飛沫感染から医療従事者を守れるよう設計された。気管チューブの抜管時、歯ブラシを用いた口腔ケア時、PCR検査時などの飛沫やエアロゾルが発生する場面で有用と考えられる。
また、同プロテクタの首掛けは、作業姿勢のままで内側から引っ張ると容易に切断できる。脱衣時、気管チューブ等の感染リスクの高い医療廃棄物を、プロテクタの中に包み込んで一括廃棄することが可能だ。脱衣時のエアロゾル拡散を最小とするために、患者にサージカルマスクを装着することと、袋の中で吸引を続けながら容積を徐々に小さくし、ゆっくり外すことが有用と考えられるという。
なお、商品の販売は株式会社ジェイ・エム・エスが担当。1箱30枚入り、3月中には発売予定だ。
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