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都会で歩道が多く、ウォーカブルな地域で認知症リスクが低下-東京医歯大ほか

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2021年03月11日 AM11:45

近隣の歩道面積割合と認知症発症との関係は?

千葉大学は3月10日、65歳以上の日本の高齢者7万人以上を約3年間追跡し、近隣の歩道面積割合と認知症発症との関係を分析した結果を発表した。この研究は、東京医科歯科大学の谷友香子助教、藤原武男教授、千葉大学の近藤克則教授、花里真道准教授、鈴木規道特任准教授からなる研究グループによるもの。研究成果は、「American Journal of Epidemiology」に掲載されている。


画像はリリースより

歩道が整備されているかどうかは、歩く上で重要な近隣環境資源であるが、先進国の中でも日本の歩道設置割合が特に低いことがわかっている。一方、歩道が高齢者の健康に及ぼす影響についてはわかってない。そこで、日本の高齢者を対象に、近隣の歩道面積割合と認知症発症との関係について追跡調査をした。

2010年に実施したJAGES(Japan Gerontological Evaluation Study,)調査に参加した65歳以上の高齢者を約3年間追跡し、近隣の歩道面積割合と認知症発症との関連について分析した。性別、年齢、認知症、近隣の歩道の情報が得られており、歩行・入浴・排泄に介助が必要な人を除いた7万6,053人のデータを用いた。歩道面積割合は地理情報システムを用いて、参加者の居住地の小学校区内の全道路面積に占める歩道面積割合を算出し、四分位で小学校区を4群に分けた。

認知症の定義は、介護保険賦課データにある「認知症高齢者の日常生活自立度」のランクⅡ以上とした。認知症リスクは年齢、年齢、性別、教育歴、経済状況、婚姻状況、就労状態、健康状態(高血圧、糖尿病、難聴、心臓病、脳卒中、うつ、手段的日常生活レベル、)、居住期間の影響を調整して、マルチレベル分析を用いて統計学的に評価した。さらに、歩道が果たす役割は都市度によって異なることが考えられたため、OECDの都市度分類に応じて参加者の居住地域を「都会」と「田舎」に分類し、それぞれにおける歩道と認知症との関連について解析した。

認知症リスク、歩道面積割合が最高の群で45%低い、都会でのみ関連

居住地の歩道面積割合が多い群から順に9,554人、1万1,847人、2万2,661人、3万1,991人であり、認知症となった人はそれぞれ、502人、766人、1,431人、2,611人。認知症リスクは、居住地の歩道面積割合が最も低い群に比べ、最も高い群で45%低い結果となった。この関係は、その他の近隣状況(病院数、食料品店数、公園数、鉄道駅数、バス停数、傾斜度、教育レベル、失業率、小学校区面積)の影響を取り除いて解析しても統計的に有意な関係となった。また、都市度別に解析した結果、歩道の認知症リスクの予防的な関係は、都会でのみ見られることもわかった。

「都市部では、近隣の歩道面積割合が高いことが認知症発症に予防的である可能性が示された。認知症にやさしい町づくりのためには、都市部では歩道の設置によるウォーカブルな都市デザインの推進が重要かもしれない」と、研究グループは述べている。

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