つわりと知らず妊婦禁忌薬のドンペリドン服用、胎児への影響は?
国立成育医療研究センターは3月10日、妊娠中の薬剤曝露症例のデータベースを結合した1万3,599例を用いて、各薬剤の安全性について解析し、妊婦が吐き気止めのために服用したドンペリドンは奇形発生率を上昇させないことを示したと発表した。この研究は、同センター妊娠と薬情報センターの村島温子センター長らと虎の門病院の共同研究によるもの。研究成果は、日本産科婦人科学会の英文誌「The Journal of Obstetrics and Gynaecology Research」に掲載されている。
つわりと知らずに吐き気止めのドンペリドンを服用し、妊娠が判明した後に禁忌薬と知り、妊娠継続に悩む女性が少なくなかった。妊婦および授乳婦において薬物治療を行う際の安全性は疫学研究をもとに判断すべきで、臨床に有用な精度の高い疫学研究を行うには多くの症例を対象とする必要がある。そこで、同センターと虎の門病院が保有する1万例にもおよぶ症例データベースを用いて、妊婦が安心して服用できるかどうかのエビデンスを出していく研究が始動した。
奇形発生率、ドンペリドン2.9%に対しコントロール薬1.7%
研究では、吐き気止め薬ドンペリドンを妊娠初期に服用した519例と、妊娠初期にリスクがないことが明らかな薬のみを服用したコントロール1,673例で、催奇形性(妊婦が薬を服用した時に、胎児に奇形が起こる危険性のこと)についてどれくらいの違いがでるかを比較した。ドンペリドンは動物実験で催奇形性が示されたことから、長年にわたって妊婦禁忌の薬剤とされてきた。
解析の結果、ドンペリドンとコントロール薬、それぞれを服用した際の奇形発生率は、2.9%と1.7%であり、有意な差は見られなかった。
同薬は米国で発売されていないため疫学研究が少なく、安全性の根拠に乏しい面もあった。しかし、今回の大規模データベースの解析では、妊婦が服用しても胎児への影響は認められなかった。今回のように大規模データベースを活用した研究成果は世界で初めてで、日本のみならず欧州やアジアを中心とした世界にとっても大きな貢献といえるという。
「妊婦がドンペリドンを服用した後も、安心して妊娠を継続してもらうことが可能になった。また、今回の成果は、厚生労働省の事業である「妊婦・授乳婦を対象とした薬の適正使用推進事業」の対象薬となる可能性もある」と、研究グループは述べている。
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・国立成育医療研究センター プレスリリース